あと30日で、他人に戻るふたり

入った瞬間から、ベランダから夕方の光が差し込む。
まぶしくて目を細めてしまった。

あ、外がよく見える。
きれい。


そんなことを思いながら、キョロキョロとリビングを見回した。
奥に、部屋がひとつ。

キッチンはシンク部分だけ対面になっていて、奥まったところは少し狭い。
IHのキッチンはかなり使いやすそうではある。

これまで住んできた部屋とは全然違う、かなりの開放感がある広さだ。


バッグの中から契約書類の一式を取り出して、間取りを確認する。
1LDK。このリビングは、十二畳あるらしい。
奥にある部屋は、六畳。

贅沢な広さだ。


「見せて」

私が間取りを見ているからか、同じようにリビングを探索していたらしい彼が手元を覗き込んできた。

「…あの、さっきの本気ですか?」

身を屈めて眺めている彼に、思い切って確認してみる。

「なにが」

「いや、一緒に住むって言ったじゃないですか!」

「俺、一ヶ月しか住まないから」

「長さの問題じゃないんですよ」

「なんで?」


常識というものを、彼は知らないのだろうか?
口にしたら失礼なのであえて黙ったけれど。

私がなにも言ってこないからか、彼はボストンバッグを足元に落とすように置いて、壁にもたれたまま笑った。


「広いし問題なくない?」


広いなら問題ないとか、そういうことじゃない!