あと30日で、他人に戻るふたり

「あっ。今日、藍沢さんの分も作りました」

言わないとパンを食べ始めそうだったので急いで声をかけると、彼は意外そうに少しだけ目を細めた。


「なんで?」

「だって、きっとまたパンですよね?」

「……どうして分かるの?」


人間がここまで色々なことに無関心だと、呆れるを通り越して面白くなってくる。

私は笑いをこらえながら、彼の背中を押す。

「はいはい、さっさとテーブルに運んでください!」

「…分かった」


まだ納得していない顔はしていたものの、言われた通りに料理やご飯を持って行ってくれた。


テーブルに並べられた、ご飯、味噌汁、蒸し野菜を添えた生姜焼き。
自分でもなかなか“ちゃんとしてるな”と思った。

そして、ふと思い出す。

「……あ、生姜焼き。三日前も食べてましたっけ」

私はあの時、ホッケ定食を食べたから今回このメニューにしてしまったけれど。

「いや、全然気にしない。生姜焼き好きだし」

ローテーブルに二人分の食事を並べながら、彼は首を振っていた。


なぜ私が彼に料理をふるまったのか、そんなことに深い理由はない。
パンしか食べてなさそうだから。それ以上の理由は言わない。

彼も追求する気はなさそうだった。