あと30日で、他人に戻るふたり

男性はその図面を見つめて、しばらく考えていた。


「……それ、お願いできますか」

やっと出てきた言葉に、小さくうなずく。

「もちろんです。調整してみます」


完璧な解決じゃない。

でも、“何もできない”わけでもない。


「ありがとうございます」


男性がほっとしたように笑ってそう言ってくれたその一言で、空気が少しだけ軽くなった気がした。



席に戻りながら、ふと考える。

正しいだけでは、進まないこともある。
でも、全部を叶えることもできない。


その間に立つのが、この仕事だ。


椅子に座って、パソコンを開く。


────『その一ヶ月をストレスフリーに生きるため』


朝の言葉が、また頭をよぎる。

……あの人なら、こんな時どう言うんだろう。


たぶん、もっとシンプルに片付けるんだろうな。
余計なことは考えずに、必要なことだけをやる。


「……それも、ありなのか」

小さくつぶやいて、キーボードに指を置く。


今日は、少しだけ迷わずに進める気がした。




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