あと30日で、他人に戻るふたり

部屋に入ったのは、初めてだった。

内見もせずに課長に勝手に決められたこの部屋は、間取りは1LDK。
玄関の電気は備え付けの薄暗いライトがついていた。

黒いスニーカーが玄関に脱いであり、もう奥のリビングに彼が行ってしまったことが伺える。


玄関のシューズボックスを開ける。
手を入れて奥行きを確認した。収納力は、十分ありそう。

私も履いていたスニーカーを脱いで、乱雑に置いてある彼のスニーカーも一緒に揃えておいた。


廊下は狭くはないけれど、広くもない。
ひとりで通るにはもちろん十分な幅。


スーツケースを持ち上げながら、廊下を進むと右手に洗面所とお風呂。

足を止めて、覗き込む。


浴槽の広さ、シャワーヘッドの位置、浴室収納をチェック。
洗面所の広さも、なかなか良さそう。
……ひとりで使うなら。


廊下に戻って、今度は左側のドアを開いた。
トイレだ。
きちんと壁に収納スペースが確保されている。


住む分には、今のところなにも問題はなさそうだ。

だけど────

なんだか、頭が痛くなってきた。


『別に一緒に住めばよくない?』

さっきの男から放たれた衝撃の言葉が頭から離れない。
無理すぎる。


なにかワケがあってこの部屋は短期ばかりだと聞いている。
どこかにみんなが早く出ていきたくなる理由があるはずなのだが。


気が重いまま、リビングのドアを開いた。