午後、一本の内線が入った。
『穂村さん、いま、少しいいですか?』
受付からの取り次ぎだった。
『テナントの方が来られていて、少しご相談があると』
時計を見る。
予定は詰まっている。
けれど、こういう“予定外”も仕事のうちだ。
「分かりました。今行きます」
受話器を戻すと、すぐに立ち上がった。
エントランス横の打ち合わせスペースに向かうと、ひとりの男性が座っていた。
年は四十代くらいだろうか。
少し疲れたような表情で、資料を手にしている。
「お待たせしました。穂村です」
声をかけると、男性は顔を上げて軽く会釈した。
「すみません、突然」
「いえ、大丈夫です。どうされましたか?」
差し出されたのは、現在進行中の再開発エリアの資料だった。
「これ、なんですけど……」
ページをめくりながら、ゆっくりと言葉を選ぶように続ける。
「うちの店、この配置だと、人の流れが変わる気がして」
図面を見る。
たしかに、導線は変わる。
メインの通路が少しずれて、現状よりも人の流れは奥へ逃げる設計になっている。
「売上に影響が出るんじゃないかって、不安で」
その言葉は、正しい。
そして、どうしようもなく現実的だ。
「……そうですね」
一度うなずいてから、言葉を選ぶ。
「導線は変わります。ただ、その分、奥のエリアに人が流れる設計にはなっています」
説明としては間違えていないはず。
でも、それだけでは足りない。
物語るように男性は小さくうなずいたものの、表情が晴れないままだった。
……やっぱり。
響かないし、伝わってない。
『穂村さん、いま、少しいいですか?』
受付からの取り次ぎだった。
『テナントの方が来られていて、少しご相談があると』
時計を見る。
予定は詰まっている。
けれど、こういう“予定外”も仕事のうちだ。
「分かりました。今行きます」
受話器を戻すと、すぐに立ち上がった。
エントランス横の打ち合わせスペースに向かうと、ひとりの男性が座っていた。
年は四十代くらいだろうか。
少し疲れたような表情で、資料を手にしている。
「お待たせしました。穂村です」
声をかけると、男性は顔を上げて軽く会釈した。
「すみません、突然」
「いえ、大丈夫です。どうされましたか?」
差し出されたのは、現在進行中の再開発エリアの資料だった。
「これ、なんですけど……」
ページをめくりながら、ゆっくりと言葉を選ぶように続ける。
「うちの店、この配置だと、人の流れが変わる気がして」
図面を見る。
たしかに、導線は変わる。
メインの通路が少しずれて、現状よりも人の流れは奥へ逃げる設計になっている。
「売上に影響が出るんじゃないかって、不安で」
その言葉は、正しい。
そして、どうしようもなく現実的だ。
「……そうですね」
一度うなずいてから、言葉を選ぶ。
「導線は変わります。ただ、その分、奥のエリアに人が流れる設計にはなっています」
説明としては間違えていないはず。
でも、それだけでは足りない。
物語るように男性は小さくうなずいたものの、表情が晴れないままだった。
……やっぱり。
響かないし、伝わってない。



