あと30日で、他人に戻るふたり

「……先、寝ますね」

「うん」

そのまま終わるかと思った、それなのに。


「……おやすみ」

画面を見たままの声。
近くで聞くと、思っていたより低い。

一瞬だけ、言葉を返すタイミングを迷う。

「……おやすみなさい」

やっと出た声は、少しだけ遅れていた。
返した瞬間、少し静かになった。


寝室に向かう途中で、なんとなく振り返る。

変わらない背中。
なのに、どうしてか少しだけ、気になってしまう。


この人が、ちゃんと眠れているのかどうか。


そんなことを考えてしまうくらいには、もう、ただの他人じゃない気がした。