あと30日で、他人に戻るふたり

近所の雑貨屋は、平日の夕方でそこそこ人がいた。


アイボリーのラグは私の趣味。
グレー系で揃えたカーテンやソファは彼の趣味だ。
どっちかに寄せた色味で揃えようか、それとも少し遊ぶか。

棚の前で腕を組んで、うんうん唸る。


「……三つくらい、あってもいいよね」

自分に言い訳するみたいにつぶやいて、結局三つの大きなクッションを両腕に抱える。


ベージュ、くすみブルー、少し濃いグレー。


「……邪魔、って言われるかな」

一瞬よぎった言葉を、振り払う。


「いや、絶対いる」

レジに向かう足取りは、なぜか少しだけ軽かった。




••┈┈┈┈••

「ただいま」

「おかえり」


クッションを抱えて戻ると、さっきと同じ位置に彼がいる。
ソファの下のラグに座って、ローテーブルでパソコンを操作している。


私はちょっと痺れてきた腕から、ようやく弾くようにクッションを解放した。


「……増えてる」

ドサドサドサ、と音がしたからか、さすがに彼が振り返る。
そして、色とりどりのもふもふのクッションを見て目を細めていた。

こっちは大満足すぎて、にやりと笑ってみせる。

「買ってきました」

「多くない?三つあるけど」

「多くないです。必要最低限ですよ!」

「一人で?三つも?」

「使い分けるんです、気分で」