あと30日で、他人に戻るふたり

朝のやり取りを、すっかり忘れていた。
リモートで一日中、彼はここにいたのだろうか。

視線を部屋に巡らせて、違和感に気づいた。


「……あれ?」

思わず、声が漏れる。


昨日あれだけ散らかっていたダンボールが、減っている。
いや、“減っている”どころじゃない。


チェストが置かれている。
ハンガーラックも組み上がっている。
サイドテーブルも、さりげなくソファの横に収まっている。


「……え?」

思考が追いつかない。

「これ、全部……」

「うん」

彼はパソコンの画面から目を離さずに答える。

「組み立てた」

まるで“ゴミを出してきた”くらいのテンションで、普通にそう言ったものだから、こちらが間違っているみたいに感じてしまう。


「いや、量すごかったですよね!?」

「まあ、そんなでもない」

そんなでもあるって!

呆気にとられているうちに、彼はキーボードを打ちながら一瞬だけ視線をずらす。

「テレビボードも一応やっといた」

「……え」


視線を向けると、確かにきれいに設置されている。
昨日、説明書を見てそっと閉じたやつだ。

コード類もしっかりまとめられていて、ごちゃつきは一切ない。