あと30日で、他人に戻るふたり

しばらくしたあと、電話を終えた彼がこちらを向いたので「どうでしたか?」と尋ねる。

「対応してくれそうですか?」

期待を込めてそう聞いたのに。

「いや、」と彼は諦めたような目で私を見た。
その冷めた感じの温度、またしても嫌な予感しかしないんですけど。


「両方とも契約通ってるから、キャンセルしたら違約金かかるって」

「え!じゃあどうするんですか!?」

「もういいや。めんどくさいし。どうせ俺は短期で借りるだけだし」

「“もういいや”って?」

「だってあなたは金払ってないんでしょ?別に損しないじゃん」

「そういうことじゃなくて!」

私の必死な食いつきは分かっているだろうに、彼は動じることなく持っていた鍵で部屋のドアを開ける。

そして、少しだけ考えるように間を置いてから振り向きざまに言った。


「別に一緒に住めばよくない?」


先に入ってるね、って中に入っていってしまった。


取り残された私は、頭だけが追いつかずその場に立ち尽くした。

なにを、言ってるんだ?今の男は。


一緒に住む?
誰と?
いま出会ったばかりの見ず知らずの他人と?
男と?

そんなのホラーじゃん!!


「ちょっと待ってくださいよ!」

私も急いで部屋に入った。


────長い一日が、今、はじまった。




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