会社を出たあとも、頭のどこかに言葉が残っていた。
────『その顔、いいね』
────『そんな状況、放っておかない』
振り払うように、軽く首を振る。
……私って、単純だな。
ちょっといいなって思ってる人に、自分のことを気にしてもらえているような気がして、浮ついている。
自覚してしまうと、もう八代さんとは目を見て話せないような予感がして。なんとか打ち消す。
最寄り駅で電車を降りて、少しだけ歩く。
見慣れてきたはずの帰り道なのに、まだどこか落ち着かない。
マンションに着いて鍵を取り出し、ドアを開けた。
「……ただいま」
薄暗い玄関で小さくつぶやいてから、はっとする。
あまりに無意識に出た言葉。
誰に言ったんだろう、今の“ただいま”。
返事があるはずもないのに────
「おかえり」
間を置かずに、少し遠くから返ってきた。
帰ってくると思ってなかったので、びくっとして顔を上げる。
リビングに明かりがついている。
ドアを押し開けると、ローテーブルにノートパソコンを開いて、彼がそこにいた。
「あ、そっか、いたんですね。リモートだ…」
「うん、そう」
────『その顔、いいね』
────『そんな状況、放っておかない』
振り払うように、軽く首を振る。
……私って、単純だな。
ちょっといいなって思ってる人に、自分のことを気にしてもらえているような気がして、浮ついている。
自覚してしまうと、もう八代さんとは目を見て話せないような予感がして。なんとか打ち消す。
最寄り駅で電車を降りて、少しだけ歩く。
見慣れてきたはずの帰り道なのに、まだどこか落ち着かない。
マンションに着いて鍵を取り出し、ドアを開けた。
「……ただいま」
薄暗い玄関で小さくつぶやいてから、はっとする。
あまりに無意識に出た言葉。
誰に言ったんだろう、今の“ただいま”。
返事があるはずもないのに────
「おかえり」
間を置かずに、少し遠くから返ってきた。
帰ってくると思ってなかったので、びくっとして顔を上げる。
リビングに明かりがついている。
ドアを押し開けると、ローテーブルにノートパソコンを開いて、彼がそこにいた。
「あ、そっか、いたんですね。リモートだ…」
「うん、そう」



