あと30日で、他人に戻るふたり

「“誰に”“何を”ってのがぼやけてる。このままだと現場で説明できない」

私は一度、画面から目を離した。

……悔しい。
でも、分かる。

「……じゃあ、ターゲット絞ります」

そう言うと、八代さんは「いいね」と満足そうにうなずいた。


「穂村ってさ」

不意に、声のトーンが少しだけ落ちる。

「ちゃんと考えてるよね」

その音は、今さっき指摘してきたものとは違い、思っていたよりも真っ直ぐだった。

切り替わったことに気づいて、一瞬言葉に詰まる。

「…いえ、私はそんなにちゃんとしてないです」

「ううん。そう見えるよ」

即答だった。

「だから、もったいない」

逸らそうとしていた視線が、今度はしっかりと合う。
逃げたくなるのに、逸らせない。

「ちゃんとやれば、もっといけるのに」


胸の奥が、どくんと鳴った。

褒められているのか、試されているのか、分からない。
まるで私が彼の隣にいていいのか、測られているみたいだった。

「……やります」

やっとそれだけ返すと、八代さんは少しだけ笑った。

「うん。その顔、いいね」

さらっと言われて、思考が止まる。