あと30日で、他人に戻るふたり

……送信。
すぐに既読がついた。


数秒の沈黙のあと、開発から短い返答が入る。

〈その方向なら対応可能です〉

続けて、営業からも。

〈ありがとうございます。一度先方と調整します〉


画面を見つめたまま、安堵の息を吐いた。
まずはひとつ、片付いた。

ほっとしたのもつかの間。パソコンから小さな通知音が聞こえて見上げると、次の通知がもう届いている。


別の案件、別の確認、別の調整。

当たり前だけど、そう簡単に終わるわけがない。
これが日常であり、続いていくのだ。

だからこそ思考は止めないし、指も止めない。


『めんどくさそう』

頭のどこかで、まだその言葉が残っている。

……そうかもしれない。いや、たぶんそう。


事実だとしても。

「誰かがやらないと、回らないし」

誰に向けるわけでもなく小さくつぶやいて、次のタスクを開いた。




••┈┈┈┈••

午後いちで、パソコンの通知を開いたところで私は一度手を止めた。


────これは、チャットで詰める内容じゃない。

瞬時にそう判断して、椅子を引いて立ち上がった。


開発フロアへ向かうと、空気が少しだけ変わる。独特の、ちょっと静かで他のフロアよりちょっと静かな雰囲気。

キーボードの音が規則的に響いていて、会話は最小限だ。