「穂村さんの仕事は?ないの、リモート」
キーボードの打鍵音が軽快に鳴っている。
リビングに出てきた私に思いっきり視線を向けているのに、指は正確にタイピングされているようだ。
「今どきこういうの普通でしょ」
「うちはないです。出社しないとできない仕事なんで」
「開発だもんね、めんどくさそう」
悪気のない“めんどくさそう”が、朝イチで刺さる。
「……まあ、楽ではないですね」
軽く返して、そのままバッグを手に取った。
もうこれ以上話しても、たぶん平行線だ。
リビングを出て玄関へ向かいながら、ふと足を止める。
……なんだろう。
なにか、言い忘れているような。
一瞬だけ迷って、振り返った。
「……行ってきます」
自分でも少しだけ早いと思った。
まだ靴も履いていないのに。
すると、少し間を置いてから
「…いってらっしゃい」
という、いつもと同じような、なんでもない声。
なのに、それを聞いた瞬間、少しだけ胸の奥が落ち着いた気がした。
「……よし」
パンプスを履いて、今度こそ玄関のドアを開けた。
••┈┈┈┈••
キーボードの打鍵音が軽快に鳴っている。
リビングに出てきた私に思いっきり視線を向けているのに、指は正確にタイピングされているようだ。
「今どきこういうの普通でしょ」
「うちはないです。出社しないとできない仕事なんで」
「開発だもんね、めんどくさそう」
悪気のない“めんどくさそう”が、朝イチで刺さる。
「……まあ、楽ではないですね」
軽く返して、そのままバッグを手に取った。
もうこれ以上話しても、たぶん平行線だ。
リビングを出て玄関へ向かいながら、ふと足を止める。
……なんだろう。
なにか、言い忘れているような。
一瞬だけ迷って、振り返った。
「……行ってきます」
自分でも少しだけ早いと思った。
まだ靴も履いていないのに。
すると、少し間を置いてから
「…いってらっしゃい」
という、いつもと同じような、なんでもない声。
なのに、それを聞いた瞬間、少しだけ胸の奥が落ち着いた気がした。
「……よし」
パンプスを履いて、今度こそ玄関のドアを開けた。
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