あと30日で、他人に戻るふたり

「……びっくりしたぁ」

むくっと起き上がったのは、彼だった。

昨日の朝も見たけど、寝癖がすごい。あちこちにはねている。
まだ半分寝ぼけているのか、大きなあくびをしていた。


「なんで床で寝てるんですか!?びっくりするじゃないですか!」

「いや、だって…」

私の訴えを、彼は視線で物語る。

思いっきり占領していたのは────紛れもなく私だ。

「こんなにおっきいのあったら、そりゃあ座っちゃいますよ」

「いいよ。好きに使って」


彼は今度はソファに座ると、またあくびをして背伸びもしていた。

「────あ。おはよう」

「……お、おはようございます…」


不意に言ってくる“ちゃんとした挨拶”に、いつも少しだけ意外だと思ってしまう。


私は時間を確認しして、昨日お風呂にも入っていないことを思い出す。
今からシャワーを浴びて着替えて出勤しても、十分に間に合う。

そうと決まれば、と立ち上がる。

そこでふと部屋の電気を見やった。


「……あの。電気、消してくれたんですか?」

「寝れなかったから」

「……そうですか」

彼らしい答え方に、ちょっと安心してしまう。

「カーテンも、ありがとうございます」

「ああ、全部同じサイズにした。楽だから」

「え?」

「測ってないけど、多分いけると思って。遮光率いくらなんだろうな。朝このくらいなら、まあいいか」


雑すぎて、返す言葉もなかった。

それでもなんだか、このズレた彼の温度に慣れてきている自分もいる。


カーテンも、ソファも。
彼が注文したものは、ほとんど落ち着いた色合いのものが多い。
たぶん、好みなのだろう。

白ばかり選んでしまう私とは対照的だなと感じる。


もう、彼の興味はスマホに移っていた。




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