あと30日で、他人に戻るふたり

テレビボードもついでに置けたらいいな、とダンボールを開けてみたけれど。
説明書を一回読んで、そっと閉じる。

「……無理」

組み立て式は、私には到底無理だ。

届いた家具のほとんどが組み立てタイプだったので、全部放置することにした。


ソファを置いたおかげか、だいぶ“家”という雰囲気になっていた。


気づいた頃には、作りかけのチャーハンは冷めていた。


フライパンを見つめたまま、小さく息をつく。
温め直す気力も、もう残っていない。

とりあえず立ったまま一口だけ食べて、あとはいいや、と思う。


ソファに腰を下ろした瞬間、体の力が一気に抜けた。


「……疲れた」

ぽつりとこぼして、そのまま背もたれに体を預ける。


カーテンを閉めたばかりの部屋は、少しだけ静かで、少しだけ安心する。


ダンボールはそのまま。
電気もつけっぱなし。

ちゃんとしなきゃいけないことは、まだたくさんあるのに。

────もう、動けない。


目を閉じたのが先か、意識が落ちたのが先かも分からないまま、私はそのままソファに沈んでいった。



遠くで、ドアの音がした気がする。
誰かが帰ってきた、そんな気配だけを残して。

夢か現実か分からないまま、全部が消えて途絶えた。