あと30日で、他人に戻るふたり

「あーあ、遊びに行きたかったのになー。美月の新居に」

「いいよ、遊びに来てよ!なんなら優奈も住もうよ!」

「やだ!いわくつきの物件じゃん」

こちらの誘いを即刻断ってくるあたり、優奈も優奈だ。

「変な音とか、使いづらい場所とか、そういうのは?」

「今のところ、なーんにも感じない」


あの部屋が、なぜみんな早々に出ていってしまうのか。
その答えは今の私には見つけられない。

住んでいるうちに、なにか見えてくるのかもしれないが。


「でも、話聞いてると、美月はそこまで嫌って感じじゃないよね?」


ふとした優奈の何気ないその指摘で、つい言葉に詰まる。

たしかに、言うほど嫌ではない。
むしろ、あそこまでよく分からないのに、妙に落ち着いていられたのは不思議なくらいだ。

でも、それをどう説明すればいいのか分からない。

「……よく分かんない」

結局、八代さんにも言ったのと同じ言葉しか出てこない。