あと30日で、他人に戻るふたり

「まだ来ない」

「今日中には来ますよ」

「時間指定してない」

「だから、メール来たら指定すれば大丈夫です」

「ほんとに?明日俺たちがいない時に来たらどうする?」

「再配達でいいじゃないですか」

「それじゃ最短で木曜、の意味なくない?」


朝から洗面所で歯を磨きながら、会話が止まらない。

ベッドの配送メールがうんたらかんたら言っているけれど、私にはそんなのに付き合っている余裕がない。


今日はちょっと寝坊してしまったからだ。
当たり前にふたりとも。


「焦らなくても、必ず届くんですから。それでいいじゃないですか」

「俺は明日の夜からただちにあのベッドで寝たい」

子供みたいに駄々をこねている彼を放っておいて、私はさっさと洗顔までして寝室に戻ってメイクをする。


「明日受け取れなかったらどうする?」

まだリビングでなんか言ってる。


私はため息をつきながら、日焼け止めをしっかりめに顔と体に塗り込んでいく。

「明日がだめなら、明後日があります。どうしても無理なら、週末受け取りましょう」

「だから俺はただちに…」

「こういう時だけめっちゃ細かいじゃん」

つい、本音が漏れてしまった。


「睡眠時間がいかに大事なのか語ってたのは美月でしょ」

「私は雑な大地さんが好きだなあ」

普通にぽろっと言ってしまって、“好き”という言葉を軽々しく口にした自分を瞬時に呪う。


こっちは自分の言葉に動揺しているっていうのに、彼はまったく気にすることなくまだ文句を言っている。

「一応、電話だけでもしてみるかな」とか、「店より配送業者に問い合わせした方が早いのか?」とか。


いつもよりちょっと慌ただしい朝なのに、ふっと笑いが溢れてしまった。




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