なんで分かるの?と顔を上げたら、「やっぱりね」と八代さんは笑っていた。
「なんかそんな気がした。どんな男?大丈夫なの?心配だよ。襲われたりしてない?」
彼のこの矢継ぎ早の質問が、なにを意味するのか。
私に興味があるのか、本当に気にしているのか、ちゃんと心配してくれているのか、分からない。
かっこいい上にみんなにこんな感じだから、“人たらし”と言われるのも無理はない。
「どんな人か…そうですね」
藍沢大地のことを、思い出す。
「……よく分からない人、です。悪い人じゃないとは思うんですけど」
いってらっしゃい、と普通に言うあの人は、今まで出会ったことのないタイプだ。
一言では表せないような、なにかがある。
でもそれは、私の中でちゃんとした言葉にはならない。
まだ表現に悩んでいる私を、八代さんが目を細めて見ている。
「昨日会ったばかりなんで…」
知らないことばかり、と言いたかったのに「気をつけなよ」という言葉で遮られた。
「俺の経験上さ、そういう“よく分からない男”が一番厄介なんだよ。気づいたら入り込んでくるから」
「────はい」
どんな顔で返事をすればいいか分からず、曖昧に笑った。
話すだけ話して行ってしまった八代さんの背中を見送ったあと、私はゆっくりと視線を落とした。
パソコンの画面はもう立ち上がっていて、いつもと同じ業務画面が表示されている。
いつもと同じ朝。
いつもと同じはずなのに。
────今朝のことが、頭から離れない。
「行ってきます」とか「いってらっしゃい」とか。
ただそれだけの言葉なのに、どうしてか、引っかかっている。
理由なんて、分からない。
分からないまま、私はキーボードに手を置いた。
••┈┈┈┈••
「なんかそんな気がした。どんな男?大丈夫なの?心配だよ。襲われたりしてない?」
彼のこの矢継ぎ早の質問が、なにを意味するのか。
私に興味があるのか、本当に気にしているのか、ちゃんと心配してくれているのか、分からない。
かっこいい上にみんなにこんな感じだから、“人たらし”と言われるのも無理はない。
「どんな人か…そうですね」
藍沢大地のことを、思い出す。
「……よく分からない人、です。悪い人じゃないとは思うんですけど」
いってらっしゃい、と普通に言うあの人は、今まで出会ったことのないタイプだ。
一言では表せないような、なにかがある。
でもそれは、私の中でちゃんとした言葉にはならない。
まだ表現に悩んでいる私を、八代さんが目を細めて見ている。
「昨日会ったばかりなんで…」
知らないことばかり、と言いたかったのに「気をつけなよ」という言葉で遮られた。
「俺の経験上さ、そういう“よく分からない男”が一番厄介なんだよ。気づいたら入り込んでくるから」
「────はい」
どんな顔で返事をすればいいか分からず、曖昧に笑った。
話すだけ話して行ってしまった八代さんの背中を見送ったあと、私はゆっくりと視線を落とした。
パソコンの画面はもう立ち上がっていて、いつもと同じ業務画面が表示されている。
いつもと同じ朝。
いつもと同じはずなのに。
────今朝のことが、頭から離れない。
「行ってきます」とか「いってらっしゃい」とか。
ただそれだけの言葉なのに、どうしてか、引っかかっている。
理由なんて、分からない。
分からないまま、私はキーボードに手を置いた。
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