あと30日で、他人に戻るふたり

それを聞いた課長は、すかさず

「あちゃー」

と、可愛くもない古臭いリアクションをした。

「いや〜、契約通っちゃってるからさ。向こうもこっちも簡単には動かせないんだろうね」

「じゃあどうすれば!?」

「昨日はどうしたの?ふたり鉢合わせしたんでしょ?」


課長の目が、いやにキラリと光ったように見える。なにか確信を持っているような、そんな目。

そんな目で見ないでほしい。

もうすでに私たちのことなんて周りは見ていないということを確認し、少しだけ声を小さくした。


「一応、あちらも一ヶ月だけしか住まないからというので、……同居?といいますか、仕方なく部屋は同じでも別々に過ごしまして…」

「じゃあもうそれでいいじゃーん。頼むよ、穂村さーん」

「そんな!課長!ひどいです!」

見捨てるんですか!?と言うと、課長はゆっくりと首を横に振るのだった。

「しっかり調査してくれると信じて穂村さんに託したんだから。お願いね」


────あ、押し切られた。

瞬時に悟って、私はそれ以上なにも言えなかった。


ここに来るまで、しっかりこの課長を説き伏せるシミュレーションはできていたはずなのに。
いつもそうだ。こうやって結局、私の意見が通ったためしもないし、なんなら波に飲まれてしまう。


「気づいたことがあれば、逐一報告してね」

と軽く言われて、それで終わりだった。