あと30日で、他人に戻るふたり

ずーっと後ろで歯磨きをしている。
避ける気がなさそうなので、私も急いで洗顔にとりかかる。

顔を簡単に洗い、はたと気がつく。

「タオル、あります?」

「いや、ない」

「えーっ!びちょびちょです!」

「昨日のバスタオル使えば?」

とりあえずかけてあったバスタオルを手に取ろうとしているので、「待って待って!」と止めた。

なんだろう、他人に使用済みのバスタオルを無闇に触られるの、ちょっと嫌だ。


「リビング入ったところに“タオル”って書かれたダンボールあるので、持ってきてください!」

「俺も使うけどいい?」

「お好きなだけどうぞ!」


小間使いみたいになってるのに、文句のひとつも言うことなくタオルを持ってきてくれた。

すぐに届いたタオルで顔を拭き、いつものパックを顔にくっつけながら、そのまま洗面台横に吊るしていたヘアアイロンに電源をつける。


そこで、やっと後ろから声が聞こえた。

「ちょっと、交代したい」

「はーい」

私が振り返ると、彼は思いっきりむせた。


「なんだその顔」

「パックですよ。知らないんですか?」

「いや、知ってるけど」

朝からやるもんなのか、というつぶやきが聞こえたような気がしたけれど、あとは知らない。