あと30日で、他人に戻るふたり

「ごめん、下の子まだ小さいし、奥さんひとりじゃ大変だから」

「私もー。彼氏が急に泊まりに来るって言ってるんで帰りますー」


だいぶ飲んで、時間も遅くなってきた頃。

ようやくお店から出て外で次はどうするか話していたら、竹中さんと浅井さんが真っ先に時計を見て揃ってそんなことを言い出した。


「えーっ!まだ飲み足りないっすよ!二次会は?」

不満そうな声を上げたのは、やっぱり中村さんだった。

そんな彼を横目に、齋藤さんが素早く竹中さんたち側に回る。

「僕も帰ります」

「えっ、みんな帰るんですね!じゃあ私も…」


私も急いでそちらへ行こうとしたら、八代さんに手を引かれた。

「穂村はこっち。まだ時間、大丈夫だろ?」

別に酔ってもいなそうなのに、押しが強くて私の気が引ける。

振り向いて竹中さんたちに助けを求めようとするも、目が合ったのは齋藤さんだけ。

齋藤さんは、ぼそっと忠告めいたことだけつぶやく。

「穂村さん、お付き合いは程々にねー」

彼はそれ以上なにも言わなかった。


……ちょっと。どういう意味?


聞き返す前に、中村さんが帰ろうとしている三人に大きく手を振ってしまった。

「お疲れ様でしたー!またぜひー!」


三人が帰る側へ自然にまとまっていくのを見て、なぜか少しだけ取り残された気分になる。


「どーする?どっか店空いてたら行こーよ」

さっさと歩き出す中村さんを先頭にして、仕方なく八代さんと一緒に私も歩き出す。

「週末だし、どうだろうな」


隣で八代さんがスマホを取り出してお店を調べたりしている。

私はというと、正直まったく気が乗っていなかった。
どちらかといえば一次会で帰れると思っていたから、二次会まで付き合わされるのはちょっときつい。

かと言って顔に出すほどのことでもないから、いったんなにも話さず二人の会話を聞いていることしかできない。

まあまあ時間も遅いから、終電は逃したくない。