あと30日で、他人に戻るふたり

────でも。

さっきの定食屋での会話が、いまだに頭の中に残っている。


『適当でいいんじゃない?』
『ソファとか』『そこで寝るよ』

いや、よくないでしょ。


私は一度、ゆっくり息を吐いた。
ここで流したら、たぶんこの人は一生このままだ。


「……あの」

リビングに入って振り返ると、彼はもうスマホを見ている。

いや、ほんとにこの人はさあ。
デジタルデトックスにでも行ってこいや。


「寝る場所の話、まだ終わってません」

私がそう言うと、ぴたりと彼の指が止まるのが見えた。


「……まだやるの?」

「やります。大事なことって言いましたよね、私」

即答したら、彼はゆっくり顔を上げた。

その表情は、さっき定食屋で見たのと同じで、少しだけ面倒くさそうで。
でも、完全に拒否しているわけでもない。


「ソファでいいって言ったじゃん」

「よくないです」

「なんで?」

「ちゃんと休めないじゃないですか」

「寝れるよ」

「寝れません!」

「いや、寝れるって」

「身体が休まらないです!」


言い切ったあと、なんでこんなに必死なんだろう、と思い直す。
他人の彼がソファで寝ようがどこで寝ようが、私には関係ないはずなのに。