あと30日で、他人に戻るふたり

ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。


さっきまでいた定食屋のざわめきが嘘みたいに、部屋の中は静かだった。
自分の家なのに、誰かの家みたいなよそゆきの顔をしている。

電気をつけると、まだ片付いていないダンボールが影を落とす。
生活の途中、みたいな景色。

でも、そこにいるのは私ひとりじゃない。

後ろで、靴を脱ぐ音がする。


「…ただいま」

思わず小さくつぶやいてから、はっとする。

なにやってるんだろう、私。
ひとりじゃないと思ってるからって、つい口にしてしまった。

「おかえり」

間を置かずに返ってきた声に、少しだけ驚いた。


……あ、この人、こういうのはちゃんと返すんだ。
それだけで、ほんの少しだけ空気が緩む。