あと30日で、他人に戻るふたり

「……あの、自分で買いますから」

「俺も自分に必要なものは買うつもりだけど、冷蔵庫とかレンジとか、申し訳ないけど借りることになるし」

「あぁ、そういうことですか」

一応、この人なりに色々気にしてくれてはいるのか。
やっと理解した。


「諸々必要なものは確かにあると思いますけど…。まず、大事なこと決めませんか」

コップのお冷をぐいっと飲んで、ずっと気にかかっていたことを切り出す。

あちらはまったく分かっていないような様子で首をかしげていた。

「大事なこと?」

「寝る場所をどうするか、ですよ!」


彼はちらっと私を見ただけで、またスマホをいじり始めてしまった。

「聞いてます?」

「うん。聞こえた。適当でいいんじゃない?」

「は?」

「ソファとか買うから、俺そこで寝るよ」


いやいやいや、ベッド買わないの?休めなくない?

心の中で言ったつもりだったけど、声に出てたのか?というくらいにはすぐにまた彼と目が合った。

はぁー、と分かりやすいため息をつかれる。


「あのさ、疲れない?そんなに色々と気にして」

「つ、疲れませんよ!全部曖昧なこの状況が一番ストレスです!」

ため息ついたの、聞こえてたし見たからな。

「……大変なんだな、誰かと住むのって」

彼はそれだけ言うと、スマホを置いてお冷を飲んだ。


テーブルに置いたスマホには、『注文完了』という文字が見えた。


完了だと?
……いや、終わらせてたまるか。


────ちゃんと決めるって、言ったよね、私。




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