そこまで言って、はっとして口を閉じた。
こんな話をするつもりじゃなかったのに。
少しだけ後悔しながら隣を見ると、大地さんは特に気にした様子もなく聞いている。
「……結局、好きかどうかは、分かんないです」
小さく、付け足した。
「ただ……今みたいに、言われた通りに進むのが当たり前っていうのは、……ちょっと違う気がしてます」
言いながら、ずっと胸の奥に引っかかっていたものの正体が少しだけ見えた気がした。
私のとりとめのない答えを黙って聞いていた大地さんが、ふとこちらを見る。
「美月ってさ」
名前を呼ばれて、思わず顔を上げた。
「嫌なら顔に出るよね。きっと」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。
「え…?」
「無理してる時、分かりやすいよ」
あっさりとした口調で言われて、胸の奥がざわつく。
「だから、気づいてないわけじゃないでしょ」
言い切るでもなく、ただ事実を置かれたみたいな言い方だった。
なにも返せない。
否定もできないし、肯定するのも違う気がした。
ただ、見透かされたみたいで少し悔しい。
「……好きじゃないなら、そんなのやめればいいのに」
ぽつりと落とされた言葉に、どきっと胸が変な音を立てた。
「やりたくないことやってる時間、もったいなくない?」
軽い調子なのに、なぜか真っ直ぐ届く。
……この人は、どこまで分かって言ってるんだろう。
「別に今すぐじゃなくてもいいけど、俺ならやりたいこと探すけどな」
逃げ道みたいにそれだけ付け足して、彼は視線を逸らした。
ちょうどそのタイミングで、定食が運ばれてきた。
「お待たせしましたー!生姜焼きとエビフライですー!」
元気な若い男性店員ふたりが、次々に私たちの前に食事を置いていく。
湯気の立つご飯と味噌汁の匂いが、ふわっと広がった。
さっきまでの会話が、少しだけ遠くなる。
「食べよ。腹減った」
という、大地さんのひと言でいつもののんびりした空気が戻ってきた。
私も箸を割ってうなずく。
「「いただきます」」
ふたり揃って手を合わせながら、さっきの言葉が頭の中で繰り返される。
『やめればいいのに』
そんな簡単なことじゃない、と思うのに。
でも、その一言だけが妙に残っていた。
隣では、大地さんが何事もなかったみたいに箸を動かして食べている。
その横顔を見ながら、ほんの少しだけ考える。
────私は、どうしたいんだろう。
その答えは、今はまだちゃんと分からなかった。
••┈┈┈┈••
こんな話をするつもりじゃなかったのに。
少しだけ後悔しながら隣を見ると、大地さんは特に気にした様子もなく聞いている。
「……結局、好きかどうかは、分かんないです」
小さく、付け足した。
「ただ……今みたいに、言われた通りに進むのが当たり前っていうのは、……ちょっと違う気がしてます」
言いながら、ずっと胸の奥に引っかかっていたものの正体が少しだけ見えた気がした。
私のとりとめのない答えを黙って聞いていた大地さんが、ふとこちらを見る。
「美月ってさ」
名前を呼ばれて、思わず顔を上げた。
「嫌なら顔に出るよね。きっと」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。
「え…?」
「無理してる時、分かりやすいよ」
あっさりとした口調で言われて、胸の奥がざわつく。
「だから、気づいてないわけじゃないでしょ」
言い切るでもなく、ただ事実を置かれたみたいな言い方だった。
なにも返せない。
否定もできないし、肯定するのも違う気がした。
ただ、見透かされたみたいで少し悔しい。
「……好きじゃないなら、そんなのやめればいいのに」
ぽつりと落とされた言葉に、どきっと胸が変な音を立てた。
「やりたくないことやってる時間、もったいなくない?」
軽い調子なのに、なぜか真っ直ぐ届く。
……この人は、どこまで分かって言ってるんだろう。
「別に今すぐじゃなくてもいいけど、俺ならやりたいこと探すけどな」
逃げ道みたいにそれだけ付け足して、彼は視線を逸らした。
ちょうどそのタイミングで、定食が運ばれてきた。
「お待たせしましたー!生姜焼きとエビフライですー!」
元気な若い男性店員ふたりが、次々に私たちの前に食事を置いていく。
湯気の立つご飯と味噌汁の匂いが、ふわっと広がった。
さっきまでの会話が、少しだけ遠くなる。
「食べよ。腹減った」
という、大地さんのひと言でいつもののんびりした空気が戻ってきた。
私も箸を割ってうなずく。
「「いただきます」」
ふたり揃って手を合わせながら、さっきの言葉が頭の中で繰り返される。
『やめればいいのに』
そんな簡単なことじゃない、と思うのに。
でも、その一言だけが妙に残っていた。
隣では、大地さんが何事もなかったみたいに箸を動かして食べている。
その横顔を見ながら、ほんの少しだけ考える。
────私は、どうしたいんだろう。
その答えは、今はまだちゃんと分からなかった。
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