あと30日で、他人に戻るふたり

老舗っぽい、ちょっと古いけど温もりのある食堂みたいなこのお店は、男性客ばかりだった。

みんなご飯は大盛りだ。ビールを飲んでいる人もけっこういる。

「ビール飲みたい…」

ぽろり、と出てしまった。


「飲めば?」

「……藍沢さんは?」

「今日はいいかな」

「じゃあ私もやめておきます。……ホッケ定食にします」

「飲めばいいのに。あ、すみませーん、注文お願いします」


彼はさくっと生姜焼き定食とホッケ定食を注文してくれて、またスマホでなにか見ている。

わりとずっとスマホを見ている姿ばかりなので、彼は会話はしないタイプだと踏んで私も話しかけなかった。

すると、今度は逆に彼から話しかけてきた。


「あの部屋の家具って、あれだけ?」

「え?…はい。あとは、必要な時に買い足すつもりで」

「俺、家具ないからなんか買うよ。なにがいる?」

「はい?」

聞き返すと、スマホの画面を見せられた。

めちゃくちゃ、家具の通販サイト。
ずっといじってたのは、これを検索していたらしい。