あと30日で、他人に戻るふたり

あっさりとしているけれど、思ってたよりちゃんと返ってきた。
それがちょっとだけ意外だった。

そして、ひとつ思い出したことがあったのでそれもちゃんと言う。

「あと、帰ってきた時も。声かけてください。理由はさっきと同じです」


言ったそばからめちゃくちゃ嫌そうな顔をしている。

「…げぇ。めんどくさい」

「そこは頑張ってください!!!人として大事なコミュニケーションですからね!!!」


念を押すようにテーブルを叩くと、彼は深いため息をついていた。
納得しているのかしていないのかは、分からない。


ふと。

「……一応、」

彼がベランダの夜景を眺めながら、ぼそっとつぶやいた。

「帰る時は静かにする」


その一言に、ほんの少しだけ肩の力が抜けた。


────なんだろう。

この人、めちゃくちゃ面倒くさいのに。
全部“合理的”で片付けるくせに。


ちゃんと、最低限は守る気がある。


…それが分かっただけで、少しだけ、“ひとりじゃない部屋”になった。




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