社員食堂は昼時で、それなりに混んでいた。
空いている席を見つけて座り、適当に選んだ鮭定食に箸をつける。
特に考えずに口に運んでいたはずなのに、味がよく分からない。
「穂村、お疲れ」
顔を上げると、トレーを持った八代さんが立っていた。
「珍しくひとりで食べてるんだな」
「今日は優奈が外回りに付き合ってていなくて」
「あー、いつも一緒にいるイメージ」
そう言いながら、彼は当たり前のように私の向かいに座る。
彼のトレーにはとんかつ定食が乗っていた。
八代さんは箸を割りながら
「明日、どうする?」
と尋ねてきた。
「明日…」
ここで大事なことを思い出した。
明日、この人と仕事終わりにご飯に行くんだった。
私としたことが。忘れかけていた。
「あっ、そうですよね。どこに行きますか?」
そんな私の様子なんて気にすることもなく、八代さんがちょっと悩んだように首をひねる。
「せっかくだから飲みに行こうよ。俺がよく行くダイニングバーとかでもいい?」
「あ…はい」
流されるみたいに返事をしてしまった。
「そこなら穂村も帰りやすいだろうし。終電逃したら責任は取れないしな」
“責任は取れない”という言い方が、少しだけ引っかかった。
でも、私が帰りやすい場所を選んでくれている優しさの方を受け取ることにする。
……深い意味は、ないはずなのに。
ありがたいはずなのに、どこか引っかかる。
でもその違和感に、気付かないふりをした。
「あとで店のURL送っとくよ」
「ありがとうございます」
お礼を言いながら、手元の定食に視線を落とす。
────なんで、こんな気分なんだろう。
気を抜くと浮かび上がりそうな心を抑えて、ご飯を口に運んだ。
••┈┈┈┈••
空いている席を見つけて座り、適当に選んだ鮭定食に箸をつける。
特に考えずに口に運んでいたはずなのに、味がよく分からない。
「穂村、お疲れ」
顔を上げると、トレーを持った八代さんが立っていた。
「珍しくひとりで食べてるんだな」
「今日は優奈が外回りに付き合ってていなくて」
「あー、いつも一緒にいるイメージ」
そう言いながら、彼は当たり前のように私の向かいに座る。
彼のトレーにはとんかつ定食が乗っていた。
八代さんは箸を割りながら
「明日、どうする?」
と尋ねてきた。
「明日…」
ここで大事なことを思い出した。
明日、この人と仕事終わりにご飯に行くんだった。
私としたことが。忘れかけていた。
「あっ、そうですよね。どこに行きますか?」
そんな私の様子なんて気にすることもなく、八代さんがちょっと悩んだように首をひねる。
「せっかくだから飲みに行こうよ。俺がよく行くダイニングバーとかでもいい?」
「あ…はい」
流されるみたいに返事をしてしまった。
「そこなら穂村も帰りやすいだろうし。終電逃したら責任は取れないしな」
“責任は取れない”という言い方が、少しだけ引っかかった。
でも、私が帰りやすい場所を選んでくれている優しさの方を受け取ることにする。
……深い意味は、ないはずなのに。
ありがたいはずなのに、どこか引っかかる。
でもその違和感に、気付かないふりをした。
「あとで店のURL送っとくよ」
「ありがとうございます」
お礼を言いながら、手元の定食に視線を落とす。
────なんで、こんな気分なんだろう。
気を抜くと浮かび上がりそうな心を抑えて、ご飯を口に運んだ。
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