あと30日で、他人に戻るふたり

ふと後ろを振り返る。
当たり前だけど、ここには私たちふたりしかいない。

それでも、この部屋があまりにも静かすぎる気がした。


“いわくつき”とか“事故物件”とか、物騒な話をしているから余計に気になってしまう。


不意に彼が頬杖をついて面白そうに目を細める。

「実際に住んでみろって上から言われたとか?」

少しだけ口元が緩んでいた。

「それ、完全に押し付けられてるやつじゃん」


それは、図星だった。
悔しいけれど、事実だからなにも言い返せない。


「それでここに来ちゃったの?断れなくて?」

「……性格悪くないですか」

「まあ、よくはないと思う、自分でも」

今日いち、彼は笑っていた。
それもなんだか面白くない、私としては。


「けど俺、嘘は嫌いだからつかないよ」

付け足すように言われたそのセリフに、私はまた睨んでしまった。

その『嘘は嫌い』発言すらも嘘っぽいとか思う。


でも────


「で、どうする?もう、お互いの素性は知れたけど」


もうすでに私からの返事は決まってるみたいな聞き方で、私に聞いてくる。

腹を括るしかない。それだけは分かった。


「一ヶ月だけですよね?」

「うん。俺が出ていく」

即座に返され、私も負けない。

「絶対ですよ」

「疑うなら録音でもする?」

「……やっぱり不安だなあ、性格悪いもん絶対!」

思わず声を上げたら、「はいはい」と流された。