あと30日で、他人に戻るふたり

「雨予報みたいですよ。こんなに晴れてるのに」

「傘ないな」

思い出したように、でも本当にどうでもよさそうにコーヒーを飲みながら彼がつぶやく。

「降る前に買ってください。コンビニでも買えるんですから」

「別に濡れたら着替えればよくない?」

「風邪ひいちゃいますよ」


私の声なんて聞こえないみたいな顔で立ち上がり、キッチンのシンクにカップを置くと洗面所へ行ってしまった。


私は天気予報の言う通り、折り畳み傘をバッグに忍ばせておいた。
雨に当たりながら帰るのは嫌だからだ。

駅から少し歩かなければいけないというのもあるが。


気を取り直して、私も慌ただしく会社へ行く準備を始めた。


なんとなく空っぽのリビングを振り返る。

コーヒーの香りが、まだ少しだけ残っていた。




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