自分の身分を隠さずに言うべきか、一瞬迷ってしまった。
ここで明かして、なにかに悪用されたらどうしよう、とか。私の情報をどこかへ漏らされたら怖い。
ただ、彼が言っていることが本当かどうかも分からない。
「…あの、身分証とか見せてもらえます?」
「警戒してるわけね」
私の申し出で、さすがに彼も思惑を悟ったらしい。
ローテーブルに三枚のカードを出してきた。
免許証、名刺、会社の入館証だった。
ここまで全部さらけ出されると、逆に清々しい。
「あいざわだいち…」
初めて知った、彼の名前。
ちょっと犯罪者気味な顔写真付きの免許証をはじめ、すべてに印字されていた、
“藍沢 大地”。
これが、この人の名前。
「藍沢さん、ですね」
「信じた?」
「……はい」
さすがに、ここまでされたらなにも言えない。
私より三歳上だった。
丁寧に三枚重ねて、そっと返した。
相手に出されたのだから、私も名刺を出した。
アーク都市開発株式会社
開発推進部
穂村美月(ほむら みづき)
彼は名刺を手に取り表も裏もざっと目を通すと、ここで初めて興味を示したように顔を上げた。
「開発なの?ちょっと意外」
「どういう意味ですか?」
「現場出るタイプには見えなかったから」
…なんだ、その偏見は。
私は不満をちゃんと彼に見せつつも、目を伏せる。
「この部屋、ずーっと短期で契約切れるんです。長期予定で入っても、すぐ退去してしまって。いわゆる…、その、なんというか…」
「いわくつき?」
口ごもっていると、先に彼に言われてしまった。
「事故物件とかではないんです」
「ほんとに?」
「履歴を見てもなにもないんですよ」
そう言いながらも、不安になってくる。
絶対に違うと言うのもおかしい。
中で起きていることなんて、外からは見えないのだから。
ここで明かして、なにかに悪用されたらどうしよう、とか。私の情報をどこかへ漏らされたら怖い。
ただ、彼が言っていることが本当かどうかも分からない。
「…あの、身分証とか見せてもらえます?」
「警戒してるわけね」
私の申し出で、さすがに彼も思惑を悟ったらしい。
ローテーブルに三枚のカードを出してきた。
免許証、名刺、会社の入館証だった。
ここまで全部さらけ出されると、逆に清々しい。
「あいざわだいち…」
初めて知った、彼の名前。
ちょっと犯罪者気味な顔写真付きの免許証をはじめ、すべてに印字されていた、
“藍沢 大地”。
これが、この人の名前。
「藍沢さん、ですね」
「信じた?」
「……はい」
さすがに、ここまでされたらなにも言えない。
私より三歳上だった。
丁寧に三枚重ねて、そっと返した。
相手に出されたのだから、私も名刺を出した。
アーク都市開発株式会社
開発推進部
穂村美月(ほむら みづき)
彼は名刺を手に取り表も裏もざっと目を通すと、ここで初めて興味を示したように顔を上げた。
「開発なの?ちょっと意外」
「どういう意味ですか?」
「現場出るタイプには見えなかったから」
…なんだ、その偏見は。
私は不満をちゃんと彼に見せつつも、目を伏せる。
「この部屋、ずーっと短期で契約切れるんです。長期予定で入っても、すぐ退去してしまって。いわゆる…、その、なんというか…」
「いわくつき?」
口ごもっていると、先に彼に言われてしまった。
「事故物件とかではないんです」
「ほんとに?」
「履歴を見てもなにもないんですよ」
そう言いながらも、不安になってくる。
絶対に違うと言うのもおかしい。
中で起きていることなんて、外からは見えないのだから。



