あと30日で、他人に戻るふたり

日が沈んだ頃に、ようやく引っ越し業者さんたちが去っていった。

あんなに広かった部屋の中に、ダンボールと家具家電が並ぶ。
キッチン用品や洗濯機は置く場所は決まっているけれど、テレビや空気清浄機は迷子のままだ。


ベッドや小さなローテーブルなども、とりあえずそのへんに置いてある。


それに────
そびえ立つ、日用品や衣類、小物が詰まったダンボール。

その数の多さに、明らかに彼が引いていた。


「え、普通こんなに荷物ってあるの?」

「これでも断捨離したんですよ!」

「これで?」

「大事なもの、けっこう捨てましたよ…」

「これで?」


まだ引いてる。

この人、思い出とか全部捨てるタイプだ。無理。


「私、まだ賛成できないんですよ」

と、倒れたままのスーツケースを起こしながらつぶやいた。

彼はずーっと壁にもたれている。
荷物の搬入中も、一生そうしていた。スマホをいじりながら。
今もまだ、スマホを片手になにかしている。

「え?なに?」

そして、私の話をあまり聞かない。


「だから!まだ賛成してません!一緒に住むの」

「じゃあどうするの?」

「それは…これから相談しましょう」

「腹減ってきたな」

「こんな時にご飯なんて食べてる場合じゃないでしょ?」

「近くに定食屋ある。もう開店してるよ」

「行きませんよ」