神官が私のところに歩み寄ってきて、そして跪く。ロード様がゆっくりと私の背中に手を入れてくれて、身体を起こしてくれた。
何かが始まるのだろうか。怖い気持ちもあるけれど、ロード様が繋いでくれる手が私に安心をくれた。
そのまま神官が私の額にそっと指を二本触れるから、そっと目を閉じる。
するとどうだろう。急に身体が温かくなってきて、だるさや重苦しかったのが軽くなってくる。
目を開けた時には、視界が少し明るくなったような気がした。
「――ら? セーラ? 聞こえる?」
「……え?」
「セーラ。俺の言葉、わかる?」
「ロード、様。私、どうして……」
ロード様の声はさっきと変わらないのに、急に言葉がすっと私の脳内に染み込んでくるような感覚。
「よかった。魔力が上手く作用したらしい。カイエン、感謝する」
「いえ。殿下のお役に立てて何よりです。……聖女様。私の言葉もおわかりになりますか?」
「え、あ……はい。あの、私……」
ロード様にカイエンと呼ばれた神官が、私に話しかけてきて。
あれ?私、彼らと会話してる?
気が付けば、さっきまで何一つわからなかった彼らの言葉を理解できるようになっていた。
「セーラ。身体で痛むところは無い?」
「あ、はい。どこも……。あの私、どうして言葉がわかるように……?」
「神官の彼に、微量の魔力を注ぎ込んでもらったんだ」
「魔力?」
「そう。彼はカイエン。神殿で働いていてね。セーラの身体から魔力反応が見られないことに気付いてくれたんだ」
「カイエン・フォードと申します」
胸に手を当てて会釈してくれた彼に、私も会釈を返す。
それよりも、魔力反応が見られないとは一体どういうことなのだろう。
不思議に思っていると、私の顔を見て心を読んだかのようにカイエン様が教えてくれた。
「聖女様が以前この世界にいらした際は、それはそれは強大な魔力をお持ちだったと伺っております。その際は最初から言語も理解できていたとも」
「魔力に関してはなんとも……言葉は理解していました」
「えぇ。しかし今回は聖女様は最初から言語が理解できないご様子でした。そして、侍女から熱が上がっていると聞いた際にお身体に触れたところ、魔力の反応が全くなかったのです」
と、いうことは、つまり。
私は、魔力が無いとこの世界の言語を理解できない。前回は何故か強大な魔力を持ち合わせていたから最初から会話ができたけど、今回は何らかの理由で魔力がゼロだから、全く言葉がわからなかったということだろうか。
「なので、一時的にでも魔力を譲渡してみたらどうだろうか、というロード殿下の指示に従い、微量ではありますが魔力を譲渡させていただきました。言葉が通じなかったとはいえ、聖女様の承諾も無くお身体に触れてしまったこと、深くお詫び申し上げます」
「それは……全然……。むしろ、お礼を言わなければ。ありがとうございました」
「とんでもございません。聖女様とこうして言葉を交わせるようになり、大変光栄に思います」
カイエン様は優しく微笑み、
「それに、魔力と言語の関係に気が付いてくださったのはロード殿下です。私はあくまでも指示に従っただけです」
と教えてくれる。
ロード様を見やると、照れたように
「勝手にいろいろ手を焼いて悪かった。ただ、弱っているセーラを見過ごせなかったんだ。許してくれ」
また私の頭を撫でてくれた。
「セーラ。怖かっただろう。心細かっただろう。頑張ったな」
その優しい声と手つきに、凍りついていた心が少しだけほぐれていくような気がして。
「……ロード様。本当にありがとうございます」
しばらくその手に甘えてしまっていた。
何かが始まるのだろうか。怖い気持ちもあるけれど、ロード様が繋いでくれる手が私に安心をくれた。
そのまま神官が私の額にそっと指を二本触れるから、そっと目を閉じる。
するとどうだろう。急に身体が温かくなってきて、だるさや重苦しかったのが軽くなってくる。
目を開けた時には、視界が少し明るくなったような気がした。
「――ら? セーラ? 聞こえる?」
「……え?」
「セーラ。俺の言葉、わかる?」
「ロード、様。私、どうして……」
ロード様の声はさっきと変わらないのに、急に言葉がすっと私の脳内に染み込んでくるような感覚。
「よかった。魔力が上手く作用したらしい。カイエン、感謝する」
「いえ。殿下のお役に立てて何よりです。……聖女様。私の言葉もおわかりになりますか?」
「え、あ……はい。あの、私……」
ロード様にカイエンと呼ばれた神官が、私に話しかけてきて。
あれ?私、彼らと会話してる?
気が付けば、さっきまで何一つわからなかった彼らの言葉を理解できるようになっていた。
「セーラ。身体で痛むところは無い?」
「あ、はい。どこも……。あの私、どうして言葉がわかるように……?」
「神官の彼に、微量の魔力を注ぎ込んでもらったんだ」
「魔力?」
「そう。彼はカイエン。神殿で働いていてね。セーラの身体から魔力反応が見られないことに気付いてくれたんだ」
「カイエン・フォードと申します」
胸に手を当てて会釈してくれた彼に、私も会釈を返す。
それよりも、魔力反応が見られないとは一体どういうことなのだろう。
不思議に思っていると、私の顔を見て心を読んだかのようにカイエン様が教えてくれた。
「聖女様が以前この世界にいらした際は、それはそれは強大な魔力をお持ちだったと伺っております。その際は最初から言語も理解できていたとも」
「魔力に関してはなんとも……言葉は理解していました」
「えぇ。しかし今回は聖女様は最初から言語が理解できないご様子でした。そして、侍女から熱が上がっていると聞いた際にお身体に触れたところ、魔力の反応が全くなかったのです」
と、いうことは、つまり。
私は、魔力が無いとこの世界の言語を理解できない。前回は何故か強大な魔力を持ち合わせていたから最初から会話ができたけど、今回は何らかの理由で魔力がゼロだから、全く言葉がわからなかったということだろうか。
「なので、一時的にでも魔力を譲渡してみたらどうだろうか、というロード殿下の指示に従い、微量ではありますが魔力を譲渡させていただきました。言葉が通じなかったとはいえ、聖女様の承諾も無くお身体に触れてしまったこと、深くお詫び申し上げます」
「それは……全然……。むしろ、お礼を言わなければ。ありがとうございました」
「とんでもございません。聖女様とこうして言葉を交わせるようになり、大変光栄に思います」
カイエン様は優しく微笑み、
「それに、魔力と言語の関係に気が付いてくださったのはロード殿下です。私はあくまでも指示に従っただけです」
と教えてくれる。
ロード様を見やると、照れたように
「勝手にいろいろ手を焼いて悪かった。ただ、弱っているセーラを見過ごせなかったんだ。許してくれ」
また私の頭を撫でてくれた。
「セーラ。怖かっただろう。心細かっただろう。頑張ったな」
その優しい声と手つきに、凍りついていた心が少しだけほぐれていくような気がして。
「……ロード様。本当にありがとうございます」
しばらくその手に甘えてしまっていた。



