再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。

***


「セーラ。セーラ」

「っ……」

「……セーラ」


 艶のある金髪に騎士団の隊服、その上から鎧を身に纏う彼は、驚きつつも私を抱きしめた後。軽々と私を横抱きにして持ち上げた。

 そして首に腕を回してぎゅっと抱きつきながら泣きじゃくる私に何を思ったか、王様に何かを話をしてから部屋に戻ってきてくれて。

 優しく私の名前を呼びながら、ベッドに寝かせて頭を撫でてくれる。


「ロード様……」


 彼はロード・ドラムトン。ここ、ドラムトン王国の第三王子であり、騎士団に所属していたはずだ。

 歳はあの頃で私より少し年上だったけれど、今はどうだろう。

 王族と同等の身分があったあの頃の私には、気軽に会話できる人なんて周りに誰もいなくて。唯一、歳の近かった王族であるロード様と懇意にしていた。

 その際に、私の母国語を知りたいと言ってくれて少しだけ教えたことがあったのだ。


 "おはよう"

 "こんにちは"

 "久しぶり"

 "ありがとう"

 "ごめんね"

 "おやすみ"

 "ただいま"

 "おかえり"


 それくらいだったと思う。本当に簡単な言葉や挨拶ばかり。だけど、ロード様はそれを覚えていてくれたらしい。私に言葉が通じないと誰かから聞いたのだろうか。何にしても、その優しさが嬉しくてたまらなかった。


「ロード様。ありがとう」


 伝えると、安心したように微笑んだロード様。普段はキリッとしている目元がふわりと柔らかくなり、その甘いマスクがより際立つ。


「セーラ。オヤスミ」


 寝ろというよりは休めということだろうか。それに頷いて、ゆっくりと目を閉じる。すぐに眠りに落ちて、次に目が覚めたのは側で誰かの話し声が聞こえた時だった。


「ん……」

「っ、セーラ?」


 私がもぞもぞと動く音を聞いて、すぐに声をかけてくれたロード様。額に手を当て、熱を測ってくれる。


「セーラ。オハヨウ」

「……おはよう。ロード様」


 どうやら数時間経過したらしく、その間ロード様はずっと側にいてくれたらしい。相変わらず言葉はわからないけれど、ロード様が言ってくれる些細な日本語が私の心を癒してくれた。

 コンコンとノックされる音が聞こえたのは、それからしばらくしてから。ロード様が返事をして、扉が開くとあの神官がやってきた。

 ロード様と何やら話をして、そしてロード様が心配そうに私に向き直る。

 何かを言いたそうにしているものの、おそらく私がわかる言葉にできなくて困っている様子だった。私の手をぎゅっと握りしめてくれるロード様に微笑む。すると


「セーラ」


 一度名前を呼んでくれて、私が安心できるように頷いてくれた。