再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。

 入ってきたのは、侍女のようだった。見たことないその侍女は、私が起きた事に気がつくと目を見開いてからすぐに飛び出していってしまう。誰かを呼びに行ったのだろうか。

 やはり何も言葉がわからず、これからどうしていけば良いのか途方に暮れた。

 おそらく、今回も一年は日本に帰ることができないのだろう。そう思うと、ため息しかでない。

 先ほどの侍女はすぐに戻ってきて、何やら話しかけてくるけれどよくわからない。返事をしない私に、彼女は私の背中を支えながら起き上がらせてくれた。

 心配してくれているのか、額に手を当てて熱を測ってくれているよう。その手がひんやりとして気持ちがよかった。

 そう言えば、なんだか身体が熱いような気もする。頭もずっと痛むし、熱があるのだろうか。

 彼女はそのまま身振り手振りで私にこのままここにいてほしいと指示をして、また部屋を出ていく。

 一体なんなんだ。私はこれからどうなってしまうんだろう。本当に熱があるのか、気持ちがどんどん沈んでいく。

 それからどれくらい経ったか、部屋の中に先ほどの侍女と一緒に見知らぬ男性の姿があった。

 見目麗しいその人は、シルバーの長髪を後ろに一つでくくっていて、柔らかく垂れた目尻が優しい雰囲気を醸し出している。その服装は以前聖女として働いていた時によく見ていた、神官の法衣だった。

 つまり、この人は神殿に勤めているこの国の神官なのだろう。

 彼は私に何かを言った後、返事がないのを確認して額に手をかざす。しかし、すぐに目を見開いて驚いたような表情をした。


 なに?今度は一体なんなの?


 そう聞きたいけれど、彼は侍女に何かを告げると一礼してすぐに部屋を出ていってしまった。

 その様子をただ見つめていると、横から侍女がグラスを差し出してくれる。

 水だろうか。色のない透明な液体に少し警戒しつつも、彼女の目が心配そうにしているから一応受け取った。

 グラスの中の匂いを嗅いで、ほんの少しだけ口に含む。


 ……あぁ、ただの水だ。


 ホッと息を吐き出してもう一口飲むと、ガラガラに渇いた喉が潤った。

 ツン、と目に涙が滲んで、情けなくなる。

 グラスを彼女に返すと、コーンスープのようなものが乗ったお盆を差し出してくれる。だけど私はそれを一瞥しただけで、何も言わずに布団に潜り込んだ。

 お腹なんて空いてない。それより、日本に帰してほしい。

 ようやく大手の企業で働けるはずだったのに。初日だったのに。

 日本に戻って戸籍を取り戻してからの三年間、死に物狂いで頑張って生きてきて、でも働こうにも何もかもうまくいかずに全然ダメで。職を転々と変えてようやく安定した仕事に就けると思ったのに。

 全部、台無しだ。私の人生は、この世界のせいで全部めちゃくちゃだ。

 布団の中で涙を流しているうちに、再び眠りに落ちてしまっていた。