再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。

 中学生だった私は、何故か一気に七年分成長した姿で日本に降り立ったものの、そこは私の記憶とは違う景色が広がっていた。知らないお店、知らない家。見たこともない看板に、知らない道。どこに行けば家に帰れるのかもわからず、呆然としたまま近くにあった交番に駆け込んだ。

 そこで知ったのだ。七年経った世界で母は病気ですでに他界していたこと。そして私も行方不明の後に死亡したとされ戸籍を失ってしまっていたことを。

 当然、家も別の人の手に渡っていた。元々お母さん以外に身寄りはなく、親戚も会ったことがなかった私は頼れる人が誰もおらず。

 交番のおまわりさんにパトカーに乗せてもらい、そのまま警察署に駆け込んだ私は、事情を知った大人たちや行政に頼り、どうにか戸籍を戻して必死に生きてきた。

 本来ならとんでもないニュースになりそうだったものを、警察と行政の人たちが守ってくれたおかげで大騒ぎされずに済んだ。それには心から感謝している。

 最初は失踪したと言われていたらしいものの、その理由を詳しく聞かれなかったのもありがたかった。異世界に召喚されて聖女として一年間働いてましたなんて、信じてもらえるわけもないのだから。

 だけど知らぬ間に七年が経過し、成人していた。帰還と同時に私の見た目も合わせるように勝手に成長していたものの、中身は中学生のまま。学歴もない、高校にも通っていない。社会を生きていく知識なんて何もない。

 不安でたまらなくて。怖くて震えが止まらなくて。これからどうなっていくのだろう。どうやって生きていけばいいのだろう。何もわからない。何も知らない。

 あれから三年。そんな私が現代の日本で生きていくのは、本当に大変だった。


 ――そんな夢をぼんやりと見ていると、だんだんと意識が浮上して目が覚める。


 うっすらと瞼を持ち上げると、そこには知らない天蓋が広がっていた。

 どうやらベッドに寝かされていたらしい。何があったんだっけ。痛む頭を押さえながら思い出そうとして、あまりのショックに王様の御前で悲鳴を上げながら気を失ってしまったのだと気付く。

 悪い夢なら覚めてほしいと思ったけれど、残念ながら今回も現実らしい。

 着ていたスーツはいつのまにか見たこともないネグリジェらしきものに変えられており、私の荷物やスーツは近くには無い。ベッドから起き上がり辺りを見回してみると、どこぞのホテルのスイートルームのような広い部屋の中のようだった。

 一体ここはどこだろう。ぼーっと部屋の中を見つめていると、コンコンとノックをする音が聞こえる。それに返事をすることもできないまま、扉がゆっくりと開かれた。