再召喚され全てを失った元聖女は、麗しの騎士団長様の溺愛で絶望から立ち上がる。

 十年前。私、五十嵐世羅はごくごく普通の中学生だった。

 両親は私が小さい頃に離婚したため、お母さんと二人暮らしだった。母一人子一人の生活は決して裕福ではなかったし、寂しくなかったと言えば嘘になる。だけど、私のために毎日頑張ってくれているお母さんのことが大好きだった。

 そんなお母さんが体調を崩してしまったのが、中一の春で。仕事を休みがちになってしまったお母さんの看病に家事に学校にと、あの頃の私は毎日がすごく忙しかった。だけどそれをつらいと思ったことは一度もなく。友達と遊べなくても、やりたかった部活ができなくても。お母さんが元気になってくれたら、それでよかった。

 だから中二の夏にいきなり異世界に召喚された時、すぐに日本に帰りたくて仕方なくて。お母さんが心配で、また体調を崩して倒れていたらどうしようって、そればっかり考えていて。

 聖女だなんて言われても、国が危機に瀕しているから助けてほしいと言われても、正直それどころではなかったのをよく覚えている。

 だけど、召喚されてすぐに帰りたいと言った私に、王様は言った。


"この召喚魔法は一年経たないと同じ人間にはかけられないことになっている"


 と。もし同じ人間に一年経つ前にまた魔法をかけてしまうと、人間の身体が魔力と時空の歪みに耐えられずに押し潰されて死んでしまうかもしれないと言われた。

 一年経たないと、日本に戻れない。そう言われて三日三晩お母さんを想って泣き続けた私だったけれど、そこからあれよあれよという間に聖女として働くようになった。

 今思えば、利用されていたのだ。それはわかる。だけど、あの頃の絶望した私には他になす術もなく、言われるがまま聖女としての役目をこなすことしかできなかった。

 この国の人たちはすごく良くしてくれたと思う。常に国の貴賓としての扱いをしてくれたし、どうやら聖女は王族と同等の身分らしく大切に守られていた。

 だから一年後、再びここで日本に帰るために魔法をかけてもらう時、別れを惜しむ気持ちもあった。

 だけどそれも、日本に戻った瞬間に無くなってしまった。


 ――私は、日本に戻った時に死んだ人間となっていたからだ。


 どうしてかはわからない。ドラムトン王国から日本に転移する際に、時空が歪んでしまったのかもしれない。それとも、根本的にこの世界と元々の世界では時間の進み方が全く異なっていたのかもしれない。

 私がこの世界にいたのはたった一年間だったのに、日本に戻るとすでに七年が経過してしまっていた。