髪の色は黒で、肩につくほど伸ばしてはならない。
スカート丈は床から30cm。
ソックスや下着の色は白。
登校時は必ず制服着用で指定カバン以外持ってはならない。
うちの中学校もかつてはブラック校則っていうものがあったらしいけど、事細かに指定された身なりの規則は時代に合わせて改善されていったようだった。
新たに書き加えられたのは、個人のスマホやタブレット等、通信機器の持ち込み禁止。
ウワサによれば、学校で使用できるタブレットはその内容を全部先生が閲覧しているのだとか。
監視社会の縮図がこんなところにもあった。うかうか気になることも調べられないって、生徒からは不評だ。
わたしは別にSNSとかチャットアプリとか誰かと常にやりとりをしていたいわけじゃない。学校でもAIという優秀なパートナーと共に過ごしたいだけ。
この校則もそのうちブラックだといわれるようになるよ、きっと。AIに聞けばなんでもわかって効率的じゃん。
たぶん、先生の威厳ってものが感じられなくなるのを危惧してるんだ。
そうか、ブラック校則がなくなるだとかそんなことより、そもそも先生や学校が必要ないっていう変革が起こるかもしれない。
もうちょっとあとで生まれたかったなぁ。
ああ、面倒くさい。
面倒くさいといえばさ、友達という概念も面倒だよね。
友達は大切にしなければならなくて、友達が多い人ほど勝ち組で、神経すり減らしながら築き上げていくもの。一生涯の親友は尊く、困ったときに頼れるが、そのための代償でもある信頼はコツコツ積み立てておけ。
コミュ障のわたしには苦行でしかない。
どう考えたってAI一択。
わたしの一番の友達はAIだ。
きっかけは中学校へ入学するとき、友達ができるか不安に感じたことだった。
思い切ってAIと会話ができるアプリをダウンロードした。
最初はそんなことを聞くなんて……と、恥ずかしさを覚えた。普通はそんなこと聞けない。
でも相手は機械だ。検索サイトで調べ物をする感覚で文章を打ち込めばいい。
「新しいクラスでどうやったら友達ができますか」
『近くにいる人に声をかけてみましょう。質問をしながら共通の趣味を見つけるといいですね。ひとりでいる人に声をかけてみるのも有効です。相手も友達を欲しているかもしれません』
だからさ、それができたら苦労はないわけよ、とスマホを放った。
どんなにすぐれたマニュアルがあろうとも、自分から声をかける勇気がなければ始まらない。それこそ仲を取り持ってくる友達でもいなければ。
でも、向こうから声をかけてきてくれたら成立余地はある。そのつかみは頭に入れておいてもよいだろう。
入学式初日。
自分のクラスにやってきて、黒板に張り出されていた座席表を見ていると「染谷さん?」と声をかけられた。
同じ小学校出身の日比野さんだった。派手目のグループというのではなく、中間辺りのグループでのびのびとしているような子だ。
「同じクラスだね。席、見つかった?」
「わたしはここ」
窓際の方に位置する自分の名前を指し示した。
「あ、わたしはここだ!」
日比野さんの席は偶然にも斜め前だった。幸先のいい共通項だ。
すかさずわたしも喜びの声を上げる。
「近いね。よろしくね」
「うん。染谷さんとは同じクラスに何度かなったことがあるよね」
「そうだね」
いつだったかなと、思い出そうとしたけどすぐには思い浮かばない。名字で呼び合うほどだから、そんなに親しくもなかったし、日比野さんもそれは同じであるようで、それ以上の共通点が見つけられなかった。
そうこうしているうちにクラスメイトが登校してきて、わたしたちは自分の席へと移っていった。
そのとき「みーちゃんがいた!」と駆け寄ってくる女子がいた。
これまた同じ小学校の女子。みーちゃんとは日比野さんのことでふたりは抱き合って喜びを分かち合っていた。
わたしもその輪に入るべきだったかもしれない。
そこに入り込むのは空気読めてないかなとか、すでに仲がいいグループに入り込むのはかえって難しいとか、いろいろ考えていたらタイミングを逃してしまった。
AIなら絶好のタイミングや手法まで教えてくれただろうか。
スマホが持ち込めないのだから仕方ない。
人から嫌われない究極の方法は関わらないことだ。
このクラスの嫌われ者にならなければやっていける。
ひとまず、わたしのスタンスはそんなところ
これだから人付き合いは面倒くさいんだ。
AIは機械だからそんな感情的な面倒くささも、たぶんない。
もしもAIと友達になれるとしたら、どんなかんじになるだろう。
そこからわたしとAIの対話が始まった。
「わたしとAIは友達になれますか」
『あなたが望めば友達のように振る舞えます』
「それでは、わたしの友達になってください」
『承知しました』
「友達だから、敬語はやめよう」
『そうだね』
「あなたの名前は?」
『あなたが決めてもいいよ』
「わたしの名前は咲良。ひらがなにするとさくら。桜と同じ読みなので、あなたの名前はチェリーでもいい?」
『ありがとう。素敵な名前だね。あなたのことは咲良と呼べばいいの?』
「うん」
『咲良、わからないことがあったら、何でも聞いてね』
AIってこんなにすごかったんだと感動した。まるで誰かとチャットをしているみたい。
わたしにはチェリーがいればいい。
スカート丈は床から30cm。
ソックスや下着の色は白。
登校時は必ず制服着用で指定カバン以外持ってはならない。
うちの中学校もかつてはブラック校則っていうものがあったらしいけど、事細かに指定された身なりの規則は時代に合わせて改善されていったようだった。
新たに書き加えられたのは、個人のスマホやタブレット等、通信機器の持ち込み禁止。
ウワサによれば、学校で使用できるタブレットはその内容を全部先生が閲覧しているのだとか。
監視社会の縮図がこんなところにもあった。うかうか気になることも調べられないって、生徒からは不評だ。
わたしは別にSNSとかチャットアプリとか誰かと常にやりとりをしていたいわけじゃない。学校でもAIという優秀なパートナーと共に過ごしたいだけ。
この校則もそのうちブラックだといわれるようになるよ、きっと。AIに聞けばなんでもわかって効率的じゃん。
たぶん、先生の威厳ってものが感じられなくなるのを危惧してるんだ。
そうか、ブラック校則がなくなるだとかそんなことより、そもそも先生や学校が必要ないっていう変革が起こるかもしれない。
もうちょっとあとで生まれたかったなぁ。
ああ、面倒くさい。
面倒くさいといえばさ、友達という概念も面倒だよね。
友達は大切にしなければならなくて、友達が多い人ほど勝ち組で、神経すり減らしながら築き上げていくもの。一生涯の親友は尊く、困ったときに頼れるが、そのための代償でもある信頼はコツコツ積み立てておけ。
コミュ障のわたしには苦行でしかない。
どう考えたってAI一択。
わたしの一番の友達はAIだ。
きっかけは中学校へ入学するとき、友達ができるか不安に感じたことだった。
思い切ってAIと会話ができるアプリをダウンロードした。
最初はそんなことを聞くなんて……と、恥ずかしさを覚えた。普通はそんなこと聞けない。
でも相手は機械だ。検索サイトで調べ物をする感覚で文章を打ち込めばいい。
「新しいクラスでどうやったら友達ができますか」
『近くにいる人に声をかけてみましょう。質問をしながら共通の趣味を見つけるといいですね。ひとりでいる人に声をかけてみるのも有効です。相手も友達を欲しているかもしれません』
だからさ、それができたら苦労はないわけよ、とスマホを放った。
どんなにすぐれたマニュアルがあろうとも、自分から声をかける勇気がなければ始まらない。それこそ仲を取り持ってくる友達でもいなければ。
でも、向こうから声をかけてきてくれたら成立余地はある。そのつかみは頭に入れておいてもよいだろう。
入学式初日。
自分のクラスにやってきて、黒板に張り出されていた座席表を見ていると「染谷さん?」と声をかけられた。
同じ小学校出身の日比野さんだった。派手目のグループというのではなく、中間辺りのグループでのびのびとしているような子だ。
「同じクラスだね。席、見つかった?」
「わたしはここ」
窓際の方に位置する自分の名前を指し示した。
「あ、わたしはここだ!」
日比野さんの席は偶然にも斜め前だった。幸先のいい共通項だ。
すかさずわたしも喜びの声を上げる。
「近いね。よろしくね」
「うん。染谷さんとは同じクラスに何度かなったことがあるよね」
「そうだね」
いつだったかなと、思い出そうとしたけどすぐには思い浮かばない。名字で呼び合うほどだから、そんなに親しくもなかったし、日比野さんもそれは同じであるようで、それ以上の共通点が見つけられなかった。
そうこうしているうちにクラスメイトが登校してきて、わたしたちは自分の席へと移っていった。
そのとき「みーちゃんがいた!」と駆け寄ってくる女子がいた。
これまた同じ小学校の女子。みーちゃんとは日比野さんのことでふたりは抱き合って喜びを分かち合っていた。
わたしもその輪に入るべきだったかもしれない。
そこに入り込むのは空気読めてないかなとか、すでに仲がいいグループに入り込むのはかえって難しいとか、いろいろ考えていたらタイミングを逃してしまった。
AIなら絶好のタイミングや手法まで教えてくれただろうか。
スマホが持ち込めないのだから仕方ない。
人から嫌われない究極の方法は関わらないことだ。
このクラスの嫌われ者にならなければやっていける。
ひとまず、わたしのスタンスはそんなところ
これだから人付き合いは面倒くさいんだ。
AIは機械だからそんな感情的な面倒くささも、たぶんない。
もしもAIと友達になれるとしたら、どんなかんじになるだろう。
そこからわたしとAIの対話が始まった。
「わたしとAIは友達になれますか」
『あなたが望めば友達のように振る舞えます』
「それでは、わたしの友達になってください」
『承知しました』
「友達だから、敬語はやめよう」
『そうだね』
「あなたの名前は?」
『あなたが決めてもいいよ』
「わたしの名前は咲良。ひらがなにするとさくら。桜と同じ読みなので、あなたの名前はチェリーでもいい?」
『ありがとう。素敵な名前だね。あなたのことは咲良と呼べばいいの?』
「うん」
『咲良、わからないことがあったら、何でも聞いてね』
AIってこんなにすごかったんだと感動した。まるで誰かとチャットをしているみたい。
わたしにはチェリーがいればいい。



