ミッドナイト・ヴェノム






私たちの夜の姿――というか正体は、リスクとリターンさえよければ文字通り「何でも」する、何でも屋だ。



すべては、自分たちのため。自分たちが目指す未来のため、できることは何でもやりたかったというだけ。



そしてそのために手を組んだ私たちは、出会ってすぐ、同じ家に住むことにした。



だって、家賃が二つなんて効率悪いから。



仲間であるうちは、寝首をかく利益なんてありはしない。



だから一緒に暮らすにしても、お互いがお互いを害することはないという一定の信頼は最初からあった。




だが今回問題になるのは、転校してから知り合ったはずの私たちが同じ家に帰るのはおかしい、ということだ。



だから、私たちはわざわざ気を使って毎日、時間帯をずらして帰っていっていた。



少しでもバレる可能性を低くするための予防線だ。単に、一緒に同じ場所に入るのを見られたくないというだけ。



移動遊園地から帰る今日は、怜悧が先に帰っている。



だから適当に本屋で時間を潰し、1人で道を歩き、私たちの拠点に帰った、そのとき。




「おかえり」




珍しく、怜悧はすぐに玄関まで私を迎えてきた。



いつもはリビングか自分の部屋でくつろいだままだったのに、この日はまるで、私の帰りを待つ犬か彼氏のように。




「怜悧?」




私が鍵を閉めながら首を傾げると、怜悧は瞳の奥に何かを隠しながらにこりと笑い、手招きをした。




「おいで。新しいお茶菓子を買ったから。おやつにしよう」




ぞわり、と。興奮めいた何かを背筋で感じ取る。



急にどうしたんだろう、変なの。



疑問を頭の中で解決しようとすると、一つ、思い出されることがある。




『……いやだって、言ったら?』




昼、花奈の頼みで「春野 怜悧」に話しかけたあのとき。



一瞬だけ「怜悧」に戻った彼は、私にそう囁いてきて。



そして私は、怜悧の瞳の奥に炎を見たのだった。



あれは、流石の私でも慣れないような蠱惑的な表情だった。



いや違う、表情は「普通の高校生」だったのに、蠱惑的な表情とまで感じてしまうくらい、怜悧の目は本気だった。




「……」




だからちょっとだけ落ち着かず、ソワソワした気分になってしまう。



だってしょうがない。怜悧のあんな顔、付き合い長いのに初めて見たから。



そのせいでどうすればいいかわからず、私は鍵を手で弄んでバッグに押し込めてから、こっそり前髪を直した。




「ほら、これ。紅茶はいつもの淹れてあるよ」



「ほんと?ありがとう。怜悧はいつも気がきくね」




でも、動揺は悟られたくない。



だからいつも通りに平静を装い、首を傾げて微笑みかけた。



……上手く繕えてるかな。今日だけはちょっと、不安かも。



そう思いながら、ふかふかのソファに座る怜悧の隣に腰を下ろした、そのとき。