推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜



 高級食材で作った家庭の味は、驚くほど速くメンバーの胃袋に吸い込まれていった。

「ふぅ……。正直、そこらの店で食うより全然いいわ」

  RYUが満足げに腹を叩き、KAIもコーヒーを飲みながら苺依に小さく会釈した。

「婚約者ってことはお前の家のことは説明したのか?」
「それはまだだ」
「おいおい、そういうのはちゃんと言っとけよ」

 リーダーのKAIは一番年上。
 だからなのか、4兄弟の長男みたいな感じ。

 にしても、TOMAの家ってどうゆうことだろ。
 TOMAもそうだが、メンバーの素性はあまり明らかにされてない。
 本名さえ公表されていないのだから。

「わかってる。ちゃんと話すって」
「まったく。最初に説明しないといけない部分だろ。お前が如月グループの御曹司だってこと」
「………………え!!!!?」

 衝撃のカミングアウト。
 如月グループ?
 あの、如月グループ?

 ありとあらゆる業界に必ず如月グループの傘下や子会社が存在する。
 苺依が働いているホテルも如月グループの所有物だ。

「お、お、お、お、御曹司?」

 そんなの聞いてなーーーーい!!!

「見えないだろ? これでお坊ちゃんなんだぜ」
「うるさい」
「じゃ…じゃあ、お父様っていうのは……」
「如月グループの会長、如月征十郎だ」
「ひっっっっ!!!!」

 無理無理無理無理無理無理ーーー!!!
 絶対バレる!!!

 苺依の全身から血の気が引いていく。
 
 まさか、そんな家柄とは……。
 縁談って絶対お見合いとか政略結婚とかだよね。
 でも、この前の母親は?
 一緒に住んでない、のかな……。

「怖気付いたか?」
「そういうわけじゃ……」

 たしかに驚いたし、会うのは少し怖い。
 でもやっぱり……。
 あの日のあの光景と台詞が、いつまでの苺依の脳裏に焼きついて離れない。
 婚約者が必要なくらい、状況が逼迫していたのかな。

 苺依はそんな環境にいる推しを、見過ごすことはできなかった。

――To be continued