推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜



「……あれ?」

 SHOは、手に持ったタピオカミルクティーを揺らしながら、苺依をじろじろと足元から頭の先まで眺めた。
 テレビで見せる、あの「全人類の弟」のようなキラキラした笑顔のまま。

「ねぇトマくん。この、地味でパッとしない……掃除のおばさんみたいな人、だれ?」

 ……お、おばさん!?
 そりゃ、TOMAとSHOよりも年上だけど!
 ちょっとじゃない!

 苺依の額にピキッと青筋が浮かぶ。
 しかし、SHOは苺依のすぐそばまで歩み寄ると耳元で囁いた。

「……あのさ。トマくんを利用して売名しようなんて思わないことだね……消されたくなかったら、さ」

 その声は、ゾッとするほど低くて冷たい。
 顔は「天使の笑顔」のまま、吐き出す言葉は猛毒。
 これが、SHOの裏の顔?

「おいSHO、やめろ。そいつは今日から、俺の『婚約者』だ」

 TOMAの言葉に、SHOの動きが止まる。
 1秒……2秒……3秒。

「……はぁ!? トマくん、本気? こんな『いちご大福』みたいな女が婚約者?」
「いちご大福って何よ! 私は高階苺依ですっ!」

 思わず叫んだ苺依を見て、TOMAがわずかに口角を上げた。

「な。面白いだろ?」
「トマくん、趣味わるーい」
「ちょっと、失礼な!」

 初対面とは思えないほどの会話。
 あのXENOとこんな風に喋ってる自分にびっくりする。

「それにしても婚約者? トマくん、熱でもあるの?」

 呆然とするSHOを無視して、TOMAはキッチンを指差した。

「腹減った。いちご、適当に作れ。冷蔵庫の中身は自由に使っていいから」
「私が作るの?」
「当然だろ? あ、あとでメンバーも来るからその分も」
「ええ!」

 面倒くさいと思ったが、夕食の支度をするにはちょうどいい時間だった。
 苺依はキッチンに向かい冷蔵庫の中を見て目を見開いた。

「な、何これ……黒トリュフに、A5ランクのシャトーブリアン……? それにこの卵、1個500円もするやつじゃない!」

 そこにあるのは、スーパーではお目にかかれない高級食材のオンパレード。
 庶民派の苺依にとって、それはもはや「食材」ではなく「財宝」に見えた。

 ……落ち着け、私。
 このくらいでビビっちゃダメよ!

 腕をまくり、長年やってきた手際の良さで調理を開始する。
 高級肉をあえて「ガッツリ系」のスタミナ丼に、高級卵はふわっふわの出汁巻き卵に。

 その匂いに誘われるように、部屋のチャイムが再び鳴った。

――To be continued