
時刻は夕暮れを超えて夜になろうとしていた。
ホテルの最上階でのランチの後、苺依は久賀の行きつけの宝石屋に連れて行かれた。
「君の今のドレスに合うネックレスだ。着けておいてくれ」
断る術なく、苺依の胸元には思い出したくない高額のネックレスがぶら下がっている。
(こんなの失くしたらどうなるの……恐ろしいんですけど)
ちょうど、スマホの振動に気付いた苺依がその画面を確認する。
(あ、TOMAさん……)
TOMAからの着信だった。
出るかどうか悩んでいる苺依に久賀が声をかけてきた。
「そろそろ行こうか」
「あ、はい……」
苺依はスマホを鞄の中に押し込み、久賀の後をついて行った。
***
「おかしい……」
あれから電話もメールも何度しても苺依の反応がない。
朝から夕方まで何の返事もないことにTOMAは不信感を募らせていた。
(まさか、なにかあったのか……とりあえずあいつの居場所を……)
TOMAはスマホをいじり、しばらく動きを止めた。
(この場所って……あいつかっ……! くそっ!)
何かに気付いたTOMAは慌てて立ち上がった。
「トマ? どうした?」
「トイレか?」
ニヤニヤと冷やかすRYUを無視してTOMAは部屋を出た。
「悪い、俺先に帰る」
「え、トマ?」
メンバーの声を振り切りTOMAは走り出した。
***
苺依を乗せた漆黒のリムジンが、夜の街を走り会場へと到着した。
「緊張してるのかい?」
膝の上で拳を握る苺依の手をそっと包み込む久賀。
「っ……大丈夫です」
さり気なく手を引く苺依に久賀は一瞬冷えた視線を送った。
「……そう? なら行こうか」
車から降りて中に入ると豪華絢爛なシャンデリアが輝く会場内。
真紅のドレスを纏った苺依は、久賀の隣でまるで見せしめのような視線に晒されていた。
「……顔色が悪いよ。もっと笑って。僕の『所有物』としてね」
久賀は冷徹な微笑みを浮かべ、苺依の腰を強引に引き寄せる。
周囲の政財界の要人たちが、ひそひそと囁き合う。
「あの女は一体誰だ?」
「久賀の新しい愛人か?」
苺依の耳にも聞こえてくる不快な言葉。
このままだと誤解されたまま噂を流されてしまう。
(TOMAさんに迷惑がかかっちゃう。なんとかしてここから抜け出す方法を考えないと……!)
あれこれ考えていると久賀を取り巻く人だかりの中心にいた。
気に食わないが、ここでは久賀の天下だ。
「久賀様、本日も素晴らしいレセプションありがとうございます」
「律人様~、お久しぶりです~」
「これはこれは、久賀律人様。お久しぶりですな」
四方八方から声をかけられる久賀は芸能人のようだった。
男も女も、あの手この手で久賀に取り入ろうとしているのが見え見えだ。
(これはこれで大変そうだけど……)
少しばかり同情の眼差しで久賀を見る。
その時だった。
――バチッ!! フッ……
あんなに明るかった部屋が一瞬にして暗闇に包まれた。
――To be continued

