推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜



 食べ終わった食器を片付け、改めてKAIが聞いてくる。

「で……トマ、説明しろよ。なんで婚約者がこの子なんだ?」
 
 リーダーであるKAIの目が、鋭くTOMAを射抜く。
 
「あぁ、そのことだが……」

 TOMAは背もたれに体を預けた。

「……親父が、政略結婚の相手を決めてきた。来月には顔合わせだってさ。断れば、XENOのスポンサーを全部引き揚げて、グループごと潰すって脅されてる」
「はぁ!? なんだよそれ、勝手すぎるだろ!」
 
 RYUが身を乗り出して怒鳴る。
 
「だから、その前に『愛する婚約者』を用意した、ってことか?」
「ま、そういうこと」
「ふーん。でもなんでこの子なの? トマならもっと可愛い子とか選び放題じゃん」

 何気に失礼よ、SHOくん。
 でもたしかにそれはそう。
 たまたま、あの時私がいただけで。
 他の人でも良かったんじゃないかと。

「芸能界は二次スキャンダルの恐れがあるし面倒だ」
「まぁ、トマはモテモテキングだもんねぇ?」
「からかうなよ」
「冗談じゃん」
「それなりに度胸があって、如月の名にビビらない奴が必要だったんだ」

 その言葉に、リビングが静まり返った。
 苺依は、胸の奥がキュッとなるのを感じた。
 
 正直……ビビってないわけじゃない。
 でも、あの時のTOMAがあまりに寂しそうだったから……。
 
「……チッ。トマくんらしいっていうか、なんというか」
 
 SHOが毒づきながらも、苺依が淹れたコーヒーを口に運ぶ。

「ま、いいよ。あのクソジジ……あ、失礼。お父様に嫌がらせされるトマくん見るの、僕らも胸糞悪いし……協力してあげるよ、いちご大福」
「苺依ですってば! でも……ありがとうございます」
「でも、このことがお前の母親の耳に入ったら、また面倒だぞ」

 RYUが言った。
 母親という単語にあのシーンが蘇る。
 苺依はチラリとTOMAを見た。

「あー、それな。この前あいつと会ってた時に見られたんだ、こいつに」
「え、苺依ちゃんに?」
 
 TOMAがチラリと苺依を見る。

「親父にもあいつにも対抗できて俺に媚びない……そういう人材が必要だった」
「そうか……わかった。XENOも絡んでるなら俺たちも協力する」
「そうだな。スポンサーがいなかったら次のアルバムだって出せねぇしな」
「むぅぅぅ……絶対バレないでよ、大福」

 大福!?
 もうなんでもいいや。

「が、頑張ります」

 TOMAが立ち上がって苺依の方へ近寄った。
 横に立つと苺依の肩を抱き寄せ、こう言った。
 
「っつーわけで一応……俺の婚約者、ということだ」

 至近距離から香るTOMAの香水が鼻をかすめる。
 
「ちょ……近いです!」
「……仕事だと思え。これくらいで照れてたらすぐバレるだろ」
「で、でも……」
「もしかして大福……こういうの慣れてないじゃない?」
「こういうのって慣れとか関係あります?」
「あるある」

 SHOがニヤリと笑った。

――To be continued