教室とは別の特別棟にある理科室。
それは『水が何の物質から出来ているか』の実験の後、班ごとに別れて結果をノートにまとめている途中だった。
「ねぇねぇ、小林さん」
急に寄ってきて、わたしに声をかけてきたのは、別の班の女子。
名前は坂井さん……だったはず。
クラスの中心の、いわゆる一軍女子。
近づけば分かる薄いメイク。
たぶん香水を付けてるのかな。近づかれた瞬間、フワッと良い香りがした。
坂井さんはハルのことをとても気に入っている人で。
だから何となく、嫌な予感がした。
「さっきね、他の子から小林さんがワタツミサマの話をしてたって聞いたんだけど、私ハルくんと一緒に行きたいの」
わたしが聞くより先に、話し出す坂井さん。
「小林さんは咲達と一緒に行くんでしょ?だったら、ハルくんと一緒に行けるように協力してほしいな……って思って」
両手を顔の前で合わせ、坂井さんは可愛らしく首を傾げた。



