* * *
⽞関を開けても、⾳はない。
電気は消えている。
「……ただいま。」
返事はない。
当然だ。
両親はいない。
どこにいるのかも、聞いていない。
暗いままのリビングを通り過ぎる。
冷蔵庫のモーター⾳だけが、やけに⼤きい。
「……静かすぎ。」
誰も怒鳴っていない夜は、逆に落ち着かない。
⾃室のドアを開けても、真っ暗。
電気をつける気になれず、そのままベッドに腰を下ろす。
スマホを取り出す。
画⾯は、何の通知もない。
当たり前。
誰とも深く繋がっていない。
「……⼀年レンタル、か。」
⼩さく笑う。
軽⼝のつもりだった。
でも。
脳裏に浮かぶのは、フェンスの向こうに⽴つ伊織の背中。



