亮哉の胸の奥が、わずかに軋む。
「相⾺。」
「ん?」
「死ぬなら、俺が飽きてからにしてね。」
伊織は⼀瞬ぽかんとして、それから笑った。
「何それ。」
「俺、まだ飽きてないから。」
その⾔葉は、軽いのに。
不思議なくらい、重い。
伊織はブレザーの袖をぎゅっと握る。
「……じゃあ、もうちょい⽣きる。」
「どれくらい。」
「とりあえず、明⽇までは。」
亮哉は⼩さく頷いた。
「上出来。」
伊織の家の前。
⾜を⽌める。
「送迎、ありがと。」
「ああ、ここか。
どういたしまして。」
沈黙。
伊織はドアノブに⼿をかけて、振り返る。
「ねえ」
「なに。」
「もし私が急にいなくなったら」
亮哉の視線が鋭くなる。
伊織は、少しだけ笑った。
「探してね。」
その笑顔は、冗談にも、本気にも⾒えた。
亮哉は数秒⾒つめてから、静かに答える。
「……⾯倒でも探す。」
伊織は満⾜そうに⽬を細めた。
「ばいばい。」
扉が閉まる。
⼀⼈残された亮哉は、夜空を⾒上げる。
「……⼀年レンタル、マジで成⽴しそうだな。」
⼩さく呟いて、ポケットからタバコを取り出しかけ――
やめた。
代わりに、深く息を吸う。
――とりあえず、明⽇まで。
それだけでいい。



