「相⾺。」
「……なに……」
「ちゃんと帰れ。」
「……じゃあ送って。」
ぴたりと動きが⽌まる。
「は?」
「……責任、取るんでしょ……」
ほとんど囁き。
亮哉は数秒、固まる。
「……起きてから⾔えよ、そういうの。」
「……起きてる……」
完全に寝ている。
亮哉は額に⼿を当て、⼩さく笑った。
「……バレバレの嘘つくなよ。」
でも、その声はどこか柔らかい。
しばらくして、伊織が本格的に眠ってしまったのを確認すると、
亮哉は⽴ち上がる。
そして⼀瞬迷ってから、
⾃分のブレザーを脱ぎ、伊織の肩にかけた。
「……⾵邪ひかれたら困るし。」
誰に⾔うでもなく、呟く。
窓の外、⼣焼けが濃くなる。
静かな教室。
眠る伊織と、その隣に⽴つ亮哉。
亮哉はしばらくその場を離れず、ただ、伊織の寝息を聞いていた。
――彼⼥は今⽇も死ななかった。
それだけで、今⽇は⼗分だと思った。



