――今⽇、私はここで死ぬ。
ありきたりではあったけれど、不幸な⼈⽣ではなかったはずだ。
フェンスを乗り越えた先の縁に⽴って、下を⾒下ろす。
これから死ぬというのに、伊織の顔には満⾜げな笑みが浮かんでいた。
「あぁ........楽しかった。」
そんな、⼼にもないことを呟いてしまう程の⾼揚感。
そうして、伊織が⼀歩を踏み出そうとした次の瞬間――
「………何、死ぬの?」
場違いなほどにあっけからんとした声が、背後から聞こえた。
「......っ」
伊織が声に釣られるように振り返ると、屋上の⼊⼝......ドアの⼿前で、
興味深そうな、探るような笑みを浮かべて⽴っている、
眼鏡をかけた男⼦――同じクラスの、宇野亮哉がいた。


