"Mr&Mrs Ogiwara detective office" 事件簿1

すぐに事情聴取に呼ばれたホステスは、矛盾を突かれるとすぐに落ちた。

なんでも客の取り合いで煮え湯を飲まされたそのホステスが文句を言いに行ったら口論となり、かっとなってテレビ台の横に置いてあったダンベルをひっつかんで殴りつけたらしい。

そうしたらガラステーブルに同じ所をぶつける様にして倒れたのだが、その後でまだ動いていたので自分が殺したのではないと判断してその場を去ったと供述した。

確かに検視でも致命傷は右側頭部殴られたか、倒れてテーブルの角で頭を打ち付けたかした脳挫傷によるものという事だった。

即死ではなかったし、どちらの傷が致命傷になったかは定かではなかった。

殴られて倒れてからどのくらい意識があったかは分からないが、あまり長くは意識はなかっただろうという事だ。

でも、完全に心停止するまでの時間は検視では測れなかったが、犯人が部屋を去った時間が大体わかったのでその辺も解明されるだろうと。棚橋刑事が言っていた。

第一発見者は事件の次の日に回覧板を持ってきた隣家の住人だったのだ。

玄関のかぎが閉まっていないのと、何度呼んでも出てこないのを不審に思って玄関から少し入って中を覗いて死体を発見したのだ。

死体は体全体が硬直しており、発見された時点で死後6~12時間以上は経過しているとみられていた。

そのホステスは左利きで被害者の殴られた方は右の側頭部だったので、その点も一致していた。

これは犯人特定の際の切り札として隠されていたらしい。

そして家宅捜査で被害者の家にあったダンベルが一個犯人のホステスの家の燃えないゴミのごみ袋の中から見つかった。

血は綺麗に洗ってあったが鑑識の調べで血痕が付着していたルミノール反応も出て容疑が固まった。

今度の燃えないゴミの日に出そうと置いてあったのだが、朝遅い犯人が出そうと思うと前日の夜にごみ置き場に出さないといけないので出し忘れていたらしい。

棚橋刑事は犯人が確定して色々協力してもらった結花と圭介にお礼を言いに渋谷の事務所に来てくれた時に、詳しく教えてくれた。

山野辺翔は本当に真面目で純粋な青年なので、棚橋刑事は温情ある判断をした。

何とか毒物所持の件も初犯という事で厳重注意という事になったのだ。

山野辺翔は参考人とはなったが、いつでも呼び出しに応じるように言われてそれを了承したのでその日は帰されたそうだ。

圭介が呼び止めて話をしたときの印象も感じの良い青年だったと言っていた。

圭介に警察に話したいので刑事さんがいるなら会わせてほしいと言ったそうだ

棚橋刑事の話を聞いて、もうこれ以上の苦労をしなくてもいいなら良かったと結花も圭介も安堵した。

翔は結花と同じ年なのだ。智子は2歳下だと言っていた。まだ二人でやり直せる人生は今まで生きた人生の何倍にもなる。

“人生やり直しはどこからでもいつからでもできるんだ“と、松尾のお爺ちゃんがいつも言っている言葉で、結花もその言葉に何度も励まされた。

結花は圭介や夏目そして棚橋刑事と懇意にして、警官全員が嫌な人達ではないことを実感した。

陽太は圭介に補導されたことで今はきちんとした生活をして仕事もしている。

夏目は裕美さんのすべてを包み込んで警官を辞めることも厭わなかった。

結花も圭介に救われた。高校生の時に少年院に入っていた結花を求めてくれて、圭介の家族にも温かく迎えてもらった。

そして棚橋刑事は山野辺翔という若者の澄んだ目を信じ若い恋人達の未来を守ってやったのだ。