「クソ!何だ!?」
「ヤバいぞ!後ろからもやられてる!襲撃だ!」
「他にも裏切り者がいやがったのか!?」
建物内が騒がしくなる。
私は飛びかかってきた男の子を軽くいなして戦況を確認した。
隣では紫君が戦っていて、キツい回し蹴りがスカジャンを吹き飛ばしている。
紫君の蹴り技は的確だ。
お手本のように足を振り上げ狙った場所に落とし、相手を仕留める。
体重のかけ方も熟知しているからあれを食らった相手はすぐに立ち上がれないだろう。
「紫君、ここ任せていい?皆を見てくる」
「あぁ、行っておいで___ここは大丈夫」
飛んできたパンチを余裕でかわしながら紫君が頷いた。
私は混乱の中、開けた隙間を縫うように走る。
私と紫君以外のメンバーには、あらかじめセブンズシンのアジトに潜入してもらっていた。
いつもと違う場所、違う服で皆は上手く戦えてるかな?
最初に目に入った相手に声をかけた。
「きぃ君、平気かな?」
「っ…姐さん!大丈夫で___おっと!?」
投げ飛ばされた椅子をギリギリでかわすきぃ君に私は苦笑する。
きぃ君は、けして喧嘩が弱いわけじゃない。
だけど繰り出す技は蹴りやパンチといったありきたりな物で、威力も相応に平均的。
頭一つ抜けて強い…というわけでない代わりに、弱いともいえない。
平凡な強さだった。
だけど、それを本人が自覚している事が長所になっている。
彼は自分が数を相手にする力量がないと知っているからこそ、建物の壁を背中にして一人ずつ、着実に戦い勝利していた。
だけど多くの相手が密集しているこの場所では、少し分が悪いかな。
一人と組み合っているきぃ君の横から殴りかかってきた男の子に、私は飛び膝蹴りをする。
「ね、姐さん!すみませんっ…!」
「もう少しだけこらえて、きぃ君。できるね?」
「はいっ…!」
私はきぃ君の周りにいる相手を蹴散らしながら、次の仲間へ声をかけた。
「しろしろ、絶好調だね」
「うん!オレ元気!どんどんやっちゃうよー!」
スカジャンの男の子を軽々と頭上に持ち上げ、しろしろが笑う。
そのまま男の子を他のスカジャンにぶつける様はボウリングのようだった。
しろしろは持ち前の怪力で戦うのが基本スタイル。
数人程度が束になっても、その動きを止める事はできない。
相手を捕まえ、投げて飛ばす。
強いて弱点を上げるとすれば、敵に対して手加減をする事だけど___。
「きぃ君がピンチだから助っ人にいってくれる?」
「え、子分が!?大変!行かなきゃだね!」
しろしろがきぃ君を目指して列車のような勢いで去って行く。
しろしろは誰かを守る時、手加減を止める。
きぃ君の所へ行ってくれるなら、もうこの二人への心配は必要ない。
お互いの短所を補い合ってくれるはず。
立ちふさがる男の子達をはねるように吹き飛ばすしろしろの背を見届けて次の仲間の元へ向かう。
次に目に入ったのは見慣れた栗色の髪の毛。
「ちゃー君、順調?」
「それなりにねー」
気怠げに棒付きキャンディーをくわえたまま、ちゃー君が相手の攻撃をゆらりとかわす。
まるで柳の木のようにしなやかに相手の攻撃をかわし、最低限の動きで仕留めるのがちゃー君のやり方だ。
向かってきた相手の勢いを利用して、受け流す。
自分自身は省エネで、なるべく疲れないように。
彼がこんな動きをしているのは体力が関係している。
ちゃー君は私達の中で一番体力がない。
だから効率よく戦うために“柔”の動きを利用していた。
確か…合気道だったかな?
「ねぇリーダー、このあと皆でパフェ食べに行こーよ。ファミレスとかでいいから」
相手の蹴りを少し体をひねるだけで緩やかにかわし、痛い角度で手首をひねって相手を床に倒す。
「それいいねぇ、そうしよっか。じゃあそれを楽しみにもう一踏ん張りよろしく」
「はーい、りょーかい」
再びスカジャンの中を走り、最後の一人を探す。
その姿は最も奥にあった。
一際派手に喧嘩している黒髪の彼に私は口を開く。
「黒ちゃん、やってるねぇ」
「この程度、肩ならしにもならない…セブンズシンなんて名乗るからには強いかと思っていたけど…拍子抜けだな」
黒ちゃんの言葉に腹を立てたのか、周りの男の子達が手に武器を取った。
「このヤロウ…」
「ぶっ殺してやる…!」
鉄パイプや灰皿、それに小型のナイフ。
だけどそれに怯む黒ちゃんではない。
肩を回しながら相手を見据え、息を吐く。
「夢明、お前は下がってろ」
黒ちゃんが走り出す。
振りかざされた鉄パイプを軽々とかわし、持ち主の顔面を殴る。
間髪入れずに次の男の子の手元に一撃。
灰皿を蹴落とし、そのまま軸足を素早く入れ替え相手のアゴを蹴り上げた。
最後にナイフを持って向かってきた男の子の腕をひねり、武器を落とした瞬間を狙って強烈な頭突きで片付ける。
黒ちゃんの強さは別格だ。
圧倒的な喧嘩のセンスがあり、それを行動に起こせるだけの筋力とテクニックがある。
そこにいるだけで他を圧倒する気迫に、セブンズシンの兵隊達がたじろいだ。
「まだやるか?」
ギロリと睨みつける黒ちゃんを見て、一人が情けない悲鳴を上げて逃げていく。
それにつられるように、一人…また一人。
「逃げろ!こいつら化け物だ!!」
「ひいぃぃぃっ…!!」
「おい!ま、待て、テメェら!コラ___!」
後に残ったのは私達ノーネームと、連れ込まれた女の子達…そして。
逃げ遅れたセブンズシンの大将だけ。
「さて…何か言い残した事はあるかな?」
私達は一人になり、みっともなく震える大将を囲んだ。
セブンズシンとノーネーム。
その力の差は明らかだった。



